ファナック「創業家プリンス」が突然退職のなぜ 対外的な人事発表はなく、業界に広がる驚きの声
東洋経済オンライン / 2024年7月25日 8時0分
ファナックの創業者の孫で、同社専務執行役員だった稲葉清典氏(46)が、ひっそりと退職していたことがわかった。
【写真で見る】コーポレートカラーが黄色一色だったファナックに異変。社員寮は「協働ロボット」と同じ白色に緑のラインが入った配色になっている
対外的な人事発表はされておらず、6月27日に開示された株主総会の決議通知をみると、執行役員一覧から清典氏の名前がこつぜんと消えていた。
ファナックの広報は東洋経済の問い合わせに対し、「本人の希望により、6月30日付で円満に退職いたしております」と回答 。同社は本人都合による円満退職を強調するが、”創業家3代目プリンス”の輝かしい道を歩んできただけに、波紋が広がっている。
35歳で異例のスピード出世
社内では「何もわからない」と口を閉ざす社員が多い中、競合他社や取引先からは業界トップ企業の人事に驚きの声が広がっている。
ファナックを顧客とする部品メーカー役員は、「最近知ったばかりだ。関係者と一言、二言話すと、(清典氏の退職について)みんな口にする」と興奮気味だ。また、同業他社の社員が「急な辞任だったので驚いた」と話せば、別の業界関係者は「稲葉(善治)会長がかわいがっていた息子だったのに、なぜ辞めたのだろうか」と首をかしげる。
清典氏は、寄付講座や共同研究を行うなどファナックと深い縁のあるアメリカ・カリフォルニア大学バークレー校に進学。機械工学専攻の博士課程を修了し 、2009年に30歳でファナックに入社した。
入社から4年で花形のロボット研究所長を務め、2013年6月には創業者で祖父の稲葉清右衛門氏(故人)の後押しを受けて、弱冠35歳で最年少の取締役に抜擢された。さらに、そのわずか4カ月後に専務取締役へ昇格。将来の社長候補として疑う余地はなかった。
2016年には主力部署であるロボット事業本部長に就任。製造業向けIoTプラットフォーム「フィールドシステム」の開発を率いた。工場の生産設備をネットワークで接続し、情報を共有することで動作学習や故障予測を行うシステムだ。産業向けIoT基盤の先駆けとなるプロジェクトであり、当時はシスコシステムズやNTTグループとの協業などで脚光を浴びた。
2019年の展示会「CEATEC」では、主力のロボットを展示せず、「フィールドシステム」を全面展開したことでも話題となった。
だが現在、その存在感は薄く、収益にも貢献しているとは言い難い。社内では「当初の期待ほど導入が進まなかった」という見方でおおむね一致する。
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