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冴えない「パナソニック」は何が欠けているのか 「笛吹けども踊らず」に陥ってしまっている背景

東洋経済オンライン / 2024年7月25日 13時0分

パナソニック傘下の事業会社では、今年に入ってから電子部品材料の認証不正やミラーレス一眼カメラのサイトで不適切な有料画像の使用が発覚するなどの不祥事が相次いでいるが、従業員が自ら考えることを忘れ、経営トップに盲従してしまう「精神の監獄」の影響はないのだろうか。≪このくびきのおかげで、従業員は組織が自分たちに害をなしていることに気づけないのである≫(M. J. ハッチ 著, 日野健太 ・宇田理 監訳『組織論のエッセンス』同文舘出版, 2024, P.23)。

定時株主総会では「なぜ一言も説明がないのか」と株主から怒りの声が上がった。楠見氏の回答は「不正発覚を受けて電子回路基盤材料の責任者2人はすでに更迭している」「外部のコンテンツ制作会社に任せきりになっていた」「調査後に詳細を発表する」と後手に回った。

創業者、およびそれに準じる「目立つCEO」が長く続いた企業では、カリスマ幻想が意識的、無意識的の両レベルで定着している。マックス・ウェーバーによれば、「カリスマ」と見なされる決定的な条件は、奇跡を起こす人物であると認められることである。

この条件を満たしていなければ、従業員は順調に出世街道を歩んできたCEOであっても物足りなさを感じてしまう。「演技力」に欠けた人であればCEOという肩書だけが独り歩きする。

楠見氏はもともとパフォーマンスを振りまく劇場型経営者ではない。感情をあらわにしない秀才型経営者だ。大学で働いていると、教授たちに同様のタイプが多い。深く考え込むと顔が引き締まると言えば聞こえがいいが、話し相手の目には、表情が乏しい人に映っているだけである。かくいう筆者も愛嬌のない人間であると自負している。採用基準を「運と愛嬌」がある人だと考えていた松下幸之助氏から見れば不合格である。

ダイキン「中興の祖」と楠見氏の違い

空調分野でパナソニックを追い抜き、世界首位の座にあるダイキンは、創業者、創業家出身者からサラリーマン経営者の井上礼之氏にバトンを渡したところ、30年間で売上高を12倍にした。創業家(松下家)の呪縛から解放されたサラリーマン経営者の楠見氏と何が違うのだろうか。

井上礼之氏は人事畑出身であったことから、今でいうところの人的資本経営を泥臭く展開。これを「野人経営」と称している。6月に会長を退任した井上氏はとにかく初対面から感じのいい人であった。

単純すぎる表現と言われるかもしれないが、この印象は非常に重要ではないか。井上氏は野太い声で威厳を保ちながらも、親しみやすい語り口と笑顔で、従業員だけでなく顧客、株主、社会に接し発信していた。

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