「日銀利上げ」の確率を過小評価すべきではない 「高圧経済」完全脱却を市場に納得させられるか
東洋経済オンライン / 2024年7月26日 19時0分
筆者は、7月30~31日に予定されている日銀の次回金融政策決定会合でこの高圧経済戦略からの脱却がどの程度鮮明に示されるかに注目している。もし脱却への意思が中途半端であれば、再び円安が進む可能性がある。アメリカが9月に利下げしたとしても、である。
では、高圧経済とは何か。
高圧経済は英語で「High-pressure Economy」と言い、2016年に当時のイエレンFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)議長が講演で言及して以来、一般にも知られるようになった。日本はもちろん、当時は欧米でもインフレ率が目標の2%を下回る状況が続き、金融緩和が長期化していた。
人々の期待インフレ率が2%から下振れし、日本のようなデフレに陥らないようにするために、景気がよくなっても金融緩和を続け、人為的に景気の過熱感を作り出すことで経済の「体温」を上げることを目指す戦略だ。
この高圧経済戦略は欧米ではとっくに終わっている。コロナ禍の強制貯蓄(消費したくてもできなかった所得の積み上げ)が一気に消費に向かい、労働市場は人手不足で賃金が大幅上昇、そこにウクライナ戦争でエネルギー価格が急上昇するショックが加わって、FRBやECB(欧州中央銀行)は急ピッチで利上げを行った。
利上げがどの程度の引き締め効果を生んでいるかをみるには「自然利子率」が物差しとなる。自然利子率とは、景気を過熱もさせず冷やしもしない景気に中立的な実質金利を指す。これを実際の実質金利(名目金利から期待インフレ率を引いたもの)と比較して、実際の実質金利が自然利子率を下回れば緩和的、上回れば引き締め的となる。
概念は明快だが、自然利子率は客観的に観察できないので推計するしかない。自然利子率は中長期でならせば経済の実力を示す潜在成長率に近似するはずであるが、短期的には景気循環などの影響を受ける。推計方法もさまざまある。しかも手法によって推計結果に幅がある。ある手法による推計値を基にすれば緩和的だが、別の推計値では引き締め的ということも起こりうる。
こうした限界はあるものの、近年のスタンダードとなっている推計法として、元FRB金融政策局長の故トーマス・ローバック氏と現ニューヨーク連銀総裁のジョン・ウイリアムス氏らが開発したHLWモデルがある。今年7月のECBフォーラムでウイリアムス総裁自身がアメリカとユーロ圏の自然利子率の推計を報告している。
アメリカに関しては意外な推計結果が出る
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