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「日銀利上げ」の確率を過小評価すべきではない 「高圧経済」完全脱却を市場に納得させられるか

東洋経済オンライン / 2024年7月26日 19時0分

問題はそれが市場に明確に伝わっているかである。市場には「日銀は利上げに慎重で緩和的な金融環境が続く」という見方が浸透している。

確かに、個人消費は弱めであり、需給ギャップもようやくゼロに戻ったという点を捉えれば利上げが必然とはいえない。また、7月会合はQT(国債買い入れ減額)のプランを発表するため、利上げはその市場の反応を消化してからという点も理解できる。さらに、9月のFRBが利下げするなら同時に日銀が利上げを行うほうが効果的という判断もあるだろう。

一方で、円安に伴い輸入物価の上昇は続き、エネルギー価格も高止まりしている。また、食料品など今後も値上げラッシュが続き、企業の価格設定は強気化している。インフレの上振れリスクがあるならばリスクマネジメントの観点から7月の0.25%への利上げは十分に正当化できる環境にあると考える。

市場は「7月利上げなし」がコンセンサスになっているが、利上げ確率を過小評価しないほうがよいと筆者は考える。

仮に7月に利上げがなくても「インフレの上振れリスクがあるなかでリスクマネジメントの観点から利上げは正当化できる」といった9月利上げを示唆する踏み込んだメッセージで高圧経済の考え方から完全脱却したことを印象付けようとするのではないか。

逆に万が一「当面、緩和的な金融環境が継続する」といった表現が復活すれば、さらなる円安の引き金を引くことになるだろう。

QTは月額4兆円に減額し「オートパイロット」へ

7月会合では今後1~2年のQTのプランが示される。日銀はマイナス金利やYCCの撤廃を決めた3月会合で「短期金利の操作を今後の主たる政策手段とする」と明言している。買い入れの減額で金融政策スタンスを示すかのような注目の浴び方は望ましくないと考えているはずだ。

FRBの政策正常化の順序は、①まず利上げを先行、②ネットの国債買い入れ額を減額(テーパリング)、③国債買い入れ額を全額再投資レベルに削減(残高一定)、④残高削減(QT)の順番を踏んでいる。

そして、QTについては残高削減のプランを事前に示している。市場環境によってペースの調整はありうるが(実際、今年6月から削減ペースが減速された)、あくまでも金融政策スタンスは政策金利の調整で示し、QTは極力機械的に実施する「オートパイロット(自動運転)」である点を強調している。

FRBと同じアプローチを取りたい日銀

日銀も「短期金利の操作を今後の主たる政策手段とする」と明言している以上、FRBと同様の「オートパイロット」アプローチを採用したいはずである。実は現在の月間6兆円の買い入れはほぼ月間の償還額と見合っており、日銀はすでに③のフェーズにいる。

したがって、減額は④のQTの開始を意味するが、FRBの例にならえば「8月から半年間は月間4兆円、その後半年ごとに0.5兆円ずつ買い入れ額を減額する。これまで同様、買い入れ額にはある程度の幅を持たせ柔軟性を確保する。金利が大きく変動する場合は機動的な買い入れを行う。2年経過後については市場環境を踏まえて改めて計画を公表する」といったプランが考えられる。

これを機に買い入れ額ではなくFRB流に保有残高の削減幅をターゲットとすることも考えられる。具体的には「8月から半年間は国債保有残高が月間で2兆円減少するように再投資を行い、その後半年ごとに0.5兆円ずつ減額幅を増やしていく」といった具合である。このほうが政策正常化をより明快に印象付け、円安抑止には役立つだろう。

下田 知行:政策ストラテジスト・立教大学経済学部特任教授

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