トランプ暗殺未遂から聞こえる戦争への足音 「貧すれば鈍する」民主主義を破壊するもの
東洋経済オンライン / 2024年7月28日 9時0分
第2次世界大戦を経験してきた、イギリスの政治学者ハロルド・ラスキ(1893~1950年)は、こう述べている。
「これに反して、自由が危殆に瀕するのは一社会の経済が縮小し始めるときである。経済の収縮は常に恐怖であり、恐怖は常に支配者が自由に対して嫌悪を向けるのはまさにかかるときである」(『近代国家における自由』飯坂良明訳、岩波文庫、1974年、11ページ)
現在われわれ民主主義世界と称している世界を覆っているのは、未曾有の経済的衰退である。ラスキの言葉が正しければ、われわれの世界は、徐々に民主主義的世界から遠ざかり、権力者の意のままになりつつあるということである。
われわれの世界の統治者が、このことに気づいているとすれば、今は民主主義という言葉遊びにふけるよりも、やるべきことは、個々人の生活の向上なのである。
経済的改善への無為無策こそ脅威
しかし、リーマンショック以後、経済状況は一向に改善されていない。新しい経済発展の方向が定まらなければ、道は2つしかないとラスキは述べる。
「ひとつは国内抑圧、他は戦争である」(前掲書、22ページ)
現在がそうした状況だと考えたくはないが、為政者が生活に困窮する人々を前にして、経済的改善に対して無為無策に陥り、ひたすら戦争への道を進んでいるのだとすれば、この不気味な予想は当たっているのかもしれない。
気になるのは、民主主義と全体主義との戦いだといって、ひたすら戦争の継続のみを主張している民主主義諸国の統治者のことである。守るべきは、民主主義なのではなく、人々の命と安定した生活であることを忘れるべきではない。
そして、残念なことだが、1929年の大恐慌という経済的困難を克服させたものは、さまざまな経済政策ではなく、あの不幸な第2次世界大戦だったのだということを、思いだすべきかもしれない。
的場 昭弘:神奈川大学 名誉教授
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