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「ブラックぺアン2」"考察少なめ"でも面白いワケ 猛暑の今夏だからこそ求められる「王道エンタメ」

東洋経済オンライン / 2024年7月28日 19時0分

原作は医師であり作家である海堂尊。デビュー作『チーム・バチスタの崩壊』(のちに『チーム・バチスタの栄光』と改題)で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞以降、医療エンタメ小説を書き続け人気を博し、ドラマ化される作品も多い。

『ブラックペアン』シリーズは『ブラックペアン1988』『ブレイズメス1990』『スリジエセンター1991』と“バブル3部作”と呼ばれる人気作が原作になっている。

金融エンタメなら銀行員であった、『半沢直樹』の池井戸潤であり、医療ものなら、医者である海堂尊である。餅は餅屋の、ディテールに信頼感のある原作はドラマの土台を盤石にする。たとえ長い原作を短くまとめたものだとしても、緻密に積み重ねてきた描写は消えることなく、うっすらとドラマの根底に流れ息づいている。

急づくりのセットとホンモノのロケでは感じるものが圧倒的に違うようなものである。オリジナルのドラマにもがんばってほしいが、原作ものの強さにはかなわないのだ。

「ニノ」がセンターにいると安心する

そして、二宮和也。前作で演じた主人公・天才外科医・渡海征司郎も、今回の天城も、どちらも天才で、すこし斜に構えたところのある悪魔的な役だ。にもかかわらず別人という演じ分けを行えるのはなかなか至難の業。神と悪魔と両極のほうが演じ分けしやすいだろう。二宮和也は表現の引き出し豊富で、悪魔的な二役の微妙な演じ分けを飄々とやっているように見える。

もちろん、違いはそれぞれある。

海渡は病院に住み着いているような変わり者で、タバコをニヒルに吸っていて(最近はタバコシーンはコンプライアンスが厳しくなって描かれなくなった)、ちょっと昭和のヒーローのような雰囲気もあった。

論文を書かないので出世ができず、ほかの医師が手術に失敗したときフォローして、退職金を巻き上げることから、「オペ室の悪魔」の異名を持つ海渡は、いかにも現場派である。

対して、天城は、芸術家肌で、髪の毛は銀髪、フランス語を用い、自信満々で、自分の才能を大金に代えようとするドライなところがある。それぞれの役に付与されたディテールを二宮は適切に演じている。

身長はそれほど高くはないのだが、背のしゅっと高い竹内涼真と並んで歩く場面でも、引けを取らない不思議な貫禄、スター性が二宮和也にはある。こういうとき、二宮にはセンターを張ることを宿命付けられた者なのだと感じる。

「神に愛された悪魔」ではないが、神に選ばれし者――。だからこそ、多くの人が見守る中での公開手術をアーティストのようにやってのけるという役割もハマる。

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