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4割が月経異常、アスリート「婦人科問題」の深刻 10代の減量で「骨折リスク」を生涯抱えることも

東洋経済オンライン / 2024年7月29日 9時0分

「以前はそうした悩みを抱える女性アスリートの多くが、低用量ピルで症状の改善が期待できることや、月経の時期を移動できると知りませんでした。説明しても、『ピルを使うと太るから使いたくない』『将来妊娠できなくなる薬でしょ?』という反応が多かったですね。また、『過去のオリンピックで月経が重なってしまったので次は何とかしたい』と言う選手もいました。専門家から情報を受ける機会がなかったため、選手の多くが古い知識を持ったままで情報の更新が止まっているという印象でした」

そこで能瀬氏は、ピルを使ってもパフォーマンスに影響がないことなどをデータで示し、無月経はケガのリスクがあることなども根気強く伝えていった。

10年で意識に変化、治療後に記録がよくなる選手も

この10年程で選手や指導者の意識はだいぶ変わり、ピルの使用を希望する女性アスリートも増えていったという。

「競技成績にはさまざまな要因が関連するため治療を行えば必ず成果につながるわけではないのですが、エネルギー不足を改善して月経が再開し、記録がよくなる選手もいます。最近では、エネルギー不足の場合は練習量を減らすなどの対応を取る実業団チームもあります。また、2015年の調査では審美系と持久系の競技に無月経が多かったのですが、近年では婦人科の講習会などを積極的に開催したりして、婦人科問題のケアに力を入れる競技団体もあります」

こうした女性アスリートの月経問題は、一部のトップ選手の問題ではない。競技レベルごとに調査してみると、どのレベルでも約4割の女性アスリートが無月経や月経不順だとわかったという。

しかし、JISSはトップ選手しか受診できない。そこで能瀬氏は、どの競技レベルの女性アスリートでも受診できるようにと、2017年に東京大学医学部附属病院(以下:東大病院)に国立大学としては初の女性アスリート外来を開設した。

「JISSでも東大病院の女性アスリート外来でも、ホルモン値や体組成、エネルギーの消費量・摂取量などを調べます。不適切な糖質制限をしている選手は多く、そうしたエネルギー不足の場合は公認スポーツ栄養士による栄養指導を行い、月経随伴症状であれば低用量ピルやプロゲスチン製剤など薬の処方について情報提供を行います。薬の使用を決めるのは選手自身ですが、選択肢を示すことを大切にしながらコンディションの調整を行っています」

ここ10年で女性アスリートが抱える婦人科問題についての認知度は高まり、研究も進みデータが蓄積されつつある。そして今、東大病院の女性アスリート外来も新しいフェーズを迎え、今年10月から段階的に東京都千代田区の浜田病院に移行、2025年春には完全移行する予定だという。

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