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4割が月経異常、アスリート「婦人科問題」の深刻 10代の減量で「骨折リスク」を生涯抱えることも

東洋経済オンライン / 2024年7月29日 9時0分

「今後は、アスリートの人たちが気軽に通院しやすい環境作りを目指したいと思います。移行後は診察日を週3日に増やし、より多くの方が受診できるようにしていきます」

また能瀬氏は、2014年に一般社団法人女性アスリート健康支援委員会を設立し、産婦人科医の啓発も続けてきた。研修を受講した全国の産婦人科医は、同委員会ホームページで検索できるようになっている。

「10代の選手」が医療機関につながる仕組みがない

このように女性アスリートが医療機関で受診しやすい環境は整ってきたが、まだまだ課題はあるという。

例えば、2021年開催の東京オリンピック・パラリンピック競技大会における選手のピル使用率は3割と、2008年の北京大会から6倍に増えた。しかし、ピルを使っていない選手の中には、月経困難症で痛み止めを飲んでいる選手が24%、PMS(月経前症候群)の症状がある選手が67%おり、「今後も啓発が必要」だと能瀬氏は言う。

また、中高生の部活動などで運動を行う選手が医療機関につながる仕組みがない点を、能瀬氏は問題視している。思春期に利用可能エネルギー不足が続くと、月経をはじめ骨や代謝、免疫、発育・発達などにさまざまな影響が出る。中でも深刻なのが骨密度だ。骨量が最も増加する20歳頃までにしっかり骨量を獲得できていないと、疲労骨折のリスクは上がる。例えば、10代で骨密度が低いと4.5倍、疲労骨折のリスクが高いという。

「とくに身体が発育・発達過程にある10代で過度な減量はするべきではありません。引退後に月経が再開しても骨密度は低いままなので、骨折のリスクを生涯抱えながら生きていくことになります。私が診てきた中で、20代から骨粗鬆症の薬を飲んでいる選手が引退後、同年代女性の平均値に戻ったケースは一例もありません」

現状、婦人科医が学校に入っていく仕組みはないので、「学校でスクリーニングを行って月経や骨密度に問題がある子をすくい上げてほしい」と能瀬氏は話す。

例えば、紙やアンケートフォームなどの回答しやすい形で、「最後に月経がきたのはいつか」「生理痛の薬は飲んでいるか」「月経前や月経期間の体調不良はあるか」という3つの質問を定期的に行い、養護教諭や部活動の女性マネージャーなどの女性がチェックする。月経が3カ月きていないなら無月経が、強い生理痛があるなら将来の子宮内膜症のリスクが高い。早めに対策や予防が取れるよう医療機関につなげてほしいという。

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