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五輪で「米国に勝利した」バスケ日本女子の"金言" 東京五輪で銀、パリで金目指す女子バスケに必要なもの

東洋経済オンライン / 2024年7月29日 14時40分

このことは「本番前に手の内を見せてはいけない」という教訓にも映る。折りしも今回、日本は欧州入りしてからの強化試合でフランス(同7位)、ベルギー(同6位)を相手に連敗。「これでは五輪は戦えない」などとネット上で叩かれた。

ただ、予選ラウンドの最後に対戦(8月4日)するベルギーとの試合では、シュートガードとしても新境地を見せる赤穂ひまわりを出場させていない。実は故障を抱えているのか、不調なのか、それとも温存なのか。すでに情報戦が始まっているのかもしれない。

今とは違っていたこともいろいろある。夏季五輪だからと体育館を締め切って練習、わざわざ体温超えの環境を作った。そこまで暑熱対策して乗り込んだら、モントリオールの会場は「エアコンで冷え冷えだった」と前出の今野さんは笑って振り返る。試合中は水が飲めるのに、練習中の水分補給は禁止だった。

尾崎監督の命令は絶対で、誰も逆らうことはなかった。練習中のミニゲームで、ユニチカ山崎の選手を相手に戦ったら僅差になったことがあった。尾崎監督はカンカンに怒って紅白戦の5対5が何十分も続いた。監督が笛を鳴らさないので試合が止まらない。メンバーチェンジもなし。選手は足がつり、ひざまずいてはまた立ち上がり走った。監督に檄を飛ばされた選手たちは、泣きながらプレーしたという。

片桐さんは「今の時代ではありえない指導ですが、そのとき監督さんに言われた言葉は私たち選手の胸に突き刺さりました」と回顧する。尾崎監督はこう諭した。「おまえたちは何のために12名に選ばれているんだ? 日本で12名しか選ばれないんだぞ」。

この気持ちをパリ五輪を戦う代表選手たちも持っている。最年長36歳の吉田亜沙美はバスケットシューズのサイド部分に、選抜合宿や遠征に参加したものの最後に代表入りできなかた選手たちの背番号を書き込んでいる。半世紀前から選ばれし者たちの自覚は引き継がれているのだ。

ところで、「忍者ディフェンス」の意味は、片桐さんによると「相手の背後からスーッと来て2人でサンドして相手を動けなくするから」だそうだ。つまりは、自分のマークマンとの一対一に熱中している相手の虚を突いて、忍者のように忍び足で足音をたてないように近づくからだという。

片桐さんは「相手に気づかれないように近づけと監督からも言われました。そして他の選手は自分の相手を抱きしめてでもいいからパスを受けさせるな、と。そういう練習もいっぱいしました。ディフェンスの練習は本当にきつかった」と懐かしむように話した。

「忍者ディフェンス」から、「ダブルチーム」へ

このいきなり2人で囲み込む守備は現在「ダブルチーム」と呼ばれる。ダブルチームを繰り出す激しいディフェンスは、パリに挑む日本の大きな切り札でもある。また、モントリオールの代表チームには「冷静に、そして大胆に」という合言葉もあったが、この感覚はパリ組にもフィットするだろう。

「初戦のアメリカ戦はまだ予選なので自分たちの好きなようにプレーしてもいいんじゃないでしょうか。それをフランスやベルギーがみていることを頭に置いて。私でさえ自分が日本を抑えるとしたらどう演出するかな?って考えながらみることもありますよ」と今野さん。すべての国がそうやって策を練ってくる。頭脳戦を制すること、「最後は自分だ」と全員が思うことで、勝機は見出せるだろう。

島沢 優子:フリーライター

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