CEOなのにクビ「ChatGPTの親」が仕掛けた猛反撃 持ち前の人心掌握術でクーデターを4日で制圧
東洋経済オンライン / 2024年7月30日 19時0分
取締役会の構成メンバーのうち、OpenAI LPの株式を保有できるのは半数未満のメンバーに限られる。つまり取締役が最大枠9人の場合であれば4人、6人の場合であれば2人だ。因みにアルトマンは「OpenAI LPの株式を所有していない」とする旨を述べている。
この特殊な取締役会は強力な人事権を有する。そこでは会社(OpenAI LP)や株主の利益よりも「AI開発の安全性」が優先され、それに背く経営をしたと判断された場合には、たとえアルトマンのような共同創業者・CEO・取締役でも、多数決で即時解任される決まりになっていた。
対立を煽って人心を操作する
このOpenAI取締役会とアルトマンCEOの間には以前から隙間風が吹いていた。
特にChatGPTのリリースから1周年を間近に控えた2023年10月、社外取締役の一人ヘレン・トナーが大学の同僚らと共にある論文を発表した。
この論文でトナーらはOpenAIの製品開発に対する姿勢を手厳しく批判する一方、そのライバルであるAIスタートアップ企業「アンソロピック」を高く評価していた。
それによれば「OpenAIはChatGPTを大急ぎでリリースするために(その安全検査などで)手抜きをしたが、アンソロピックは(ChatGPTに対抗する)自社製チャットボット(対話型のAI)の安全性を確保するために、そのリリースを敢えて遅らせた」という。
この論文を読んだアルトマンは当然ながら気分を害した。
彼はトナーに電話をかけて「この論文はいずれ問題を引き起こすことになる」と警告を発した。この頃、アメリカのFTC(連邦取引委員会)がOpenAIに対する調査を開始しており、トナーらの論文はそれにかっこうの非難材料を与えてしまうと懸念したのだ。
電話でぶつぶつ文句を言うアルトマンに、トナーは「あれは単なる学術論文(だから、そんなに心配する必要はない)」と言い訳をした。
彼はトナーの釈明を一旦受け入れはしたが、直後に他の取締役達にメールを出して、その中で「この論文がもたらすダメージについて私達全員の認識は一致していない」と述べた。
それから間もなくアルトマンは複数の取締役らに電話して、「(もう一人の社外取締役である)ターシャ・マッコーリーがトナーを社外取締役から解任したがっている」と伝えた。
これを知らされた取締役らがマッコーリーに「トナーの解任を望んでいるというのは本当か?」と事実確認したところ、彼女は「真っ赤な噓よ(absolutely false)」と否定した。
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