1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

CEOなのにクビ「ChatGPTの親」が仕掛けた猛反撃 持ち前の人心掌握術でクーデターを4日で制圧

東洋経済オンライン / 2024年7月30日 19時0分

社内クーデターが起きてから2日後の11月19日(日)の早朝、アルトマンはOpenAIの本社ビルを訪れた。彼は入館の際、非常に困惑した表情でゲスト・バッジをつけている自撮り写真をX(旧ツイッター)でシェアし、「これをつけるのは最初で最後」とコメントした。また、その日、本社ビルにはグレッグ・ブロックマンも訪れた。

彼らは社屋の一室でビデオ会議システムから、(それぞれ異なる場所にいる)トナー、マッコーリー、ディアンジェロと交渉した。その場には、もう一人の取締役であるスツケヴァーも同席した。

この時点でアルトマンは、従業員や投資家からの圧力に耐えきれなくなった取締役会が譲歩する形で、自分がCEOに復帰すると予想していた。しかしCEOと同時に取締役への復帰も求めるアルトマンに対し、取締役会は断固拒絶するなど交渉は難航し、最終的に物別れに終わった。

同日の夕刻、OpenAI取締役会はそれまで動画配信サービス「トゥイッチ(Twitch)」のCEOを務めていたエメット・シアを新たな暫定CEOに担ぎだした。それまで同社CTOだったミラ・ムラティは暫定CEOを僅か2日間だけ務めただけで、その職を譲ることになった。

ところが、シアの暫定CEO就任を伝えるOpenAI社内のスラック(メッセージング・アプリ)には大勢の従業員から(「糞くらえ」を意味する)「中指を突き上げる」絵文字が殺到した。絶対に許すことはできない、という激しい抗議の意思表示である。

最大の理由は「お金」

OpenAIの研究者をはじめ従業員達は、それまでアルトマンCEOの配下でChatGPTやGPT-4等を開発してきた自分達の仕事に誇りを感じていた。「今の我々は歴史に残るような凄い事をやろうとしている」という実感があった。

が、それ以上に大きかったのは経済的なインセンティブだ。

アルトマンの肝いりで、OpenAIは株式公開買い付け(tender offer)を間近に控えていた。これにより同社の評価額は860億ドル(12兆円以上)に達すると見られたが、この機会にOpenAIの従業員らは自分の持ち株を売却すれば大金を手に入れることが確実視されていた。

しかしこのままアルトマンが解雇されて同社を去れば、この株式公開買い付けはお流れになり、従業員らは折角の大金持ちになるチャンスを逃してしまう。また、持ち株の価値も暴落してしまうだろう。

社内クーデターの首謀者と見られたスツケヴァーには、従業員達から抗議のメールが殺到した。

結局、わずか4日でアルトマンはCEOに復帰し、いったんはOpenAIに留まったスツケヴァーも、後にOpenAIを去ることとなった。

小林 雅一:KDDI総合研究所リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください