イーロンマスクが実績ゼロから宇宙を目指せた訳 民間企業が宇宙ビジネスをリードできるアメリカ
東洋経済オンライン / 2024年7月30日 18時0分
小型ライフサイエンス実験装置の研究開発を行う会社や、企業のDXや宇宙ビジネスコンサルティングを行う会社の代表も務め、宇宙利用の拡大を目指している堀口真吾さんは、次のように話します。
「今、世界中で勢いを増す宇宙ビジネスの状況は、世界を変えたIT革命前夜と同じであるように感じます。まさに宇宙が社会を変える、『スペース・トランスフォーメーション』が起きつつあり、宇宙という場を利用していかに価値を生み出していくかが問われています」
今後ISSが退役し「ポストISS」といわれる時代になるに際し、どのような設備・機能・サービスがあればいいのか。また、宇宙にはどのような特徴があり、環境としてどのように使うことができるのかをつづった『スペース・トランスフォーメーション』より、一部抜粋・再構成してお届けします。
ロケット打ち上げの1強はSpaceX
2024年前半の日本のロケット打ち上げは明暗が分かれる結果になりましたが、米国は日本のずっと先を走っています。宇宙開発は国家主体から民間主体へと変わり、民間企業が次々と重要な成果を挙げています。
特に注目されるのは、電子決済サービス「ペイパル」を足掛かりに、電気自動車、太陽光発電などのビジネスで成功し、Twitter(Xと改名)の買収でも知られるイーロン・マスク氏の率いる米SpaceX社です。
2002年に設立された同社は2012年、民間機として初めて国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキングを成功させ、補給物資や実験装置を送り届けました。2020年には、民間企業として史上初となる有人宇宙船の打ち上げ、およびISSドッキングを成功させました。さらに、2021年9月、搭乗者が民間人のみの宇宙船「クルードラゴン」を打ち上げ、3日間にわたり地球を周回し、海に着水しました。クルードラゴンはISSの軌道よりも高い高度585㎞に到達しました。
SpaceXはロケットの再利用の開発にも挑戦し、これを実現させました。この結果、ロケットの打ち上げコストが低減化され、打ち上げ頻度は高まりました。 2021年に31回、2022年に61回、2023年に96回の打ち上げに成功しています。4日に1回のペースでロケットを打ち上げているのです。
2023年の世界のロケット打ち上げ回数は212回で、対2022年比18%増となり、過去最高を記録しました。SpaceXはその45%を占め、ロケット打ち上げの1強と言える存在になっています。 再利用可能なロケット技術の開発は、打ち上げコストの大幅な削減を実現しました。それにより、小型衛星の打ち上げ市場が活性化されました。
小型衛星の最大のメリットは「安くて早い」
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