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イーロンマスクが実績ゼロから宇宙を目指せた訳 民間企業が宇宙ビジネスをリードできるアメリカ

東洋経済オンライン / 2024年7月30日 18時0分

小型衛星の最大のメリットは、安価で早く製造できる点にあります。従来の大型衛星の多くは、設計から打ち上げまでに5年以上の期間を必要としていました。5年たてば、市場の動向が大きく変わり、ビジネスとして成立しなくなるリスクがあります。

一方、小型衛星だと最短で1、2年で作ることが可能です。ビジネス投資を考えるうえで、この違いは非常に大きいものがあります。⼩型衛星であれば数千万円の低予算で実現できるため、ビジネスの見通しを立てやすく、リスクも⼩さく済みます。小型衛星の打ち上げ費用減少によって衛星通信や衛星からの観測データの取得といった民需が拡大し、それが打ち上げ費用のさらなる低減につながるという良循環が実現されています。

SpaceXは今、スターシップ(Starship)の開発を進めています。スターシップは完全再使用型の2段式超大型ロケット・宇宙船です。ロケットの2段目の部分がスターシップで、1段目のブースター部分はスーパーヘビーと名付けられています。2段目は長期間の軌道滞在が可能な乗客・貨物兼用の宇宙船として設計されています。スターシップは米国航空宇宙局(NASA)のアルテミス計画の月着陸船に選定されており、2026年の月面着陸が計画されています。

2023年4月に1回目のスターシップ打ち上げを実施しましたが、数分後に上空で爆発。同年11月の2回目の打ち上げでは、ブースターから宇宙船の分離に成功して宇宙空間に到達した直後に爆発しました。いずれも燃料漏れなどのトラブルが原因とみられています。世界を牽引するSpaceXでさえ、ロケット開発は難しいのです。

3回目の打ち上げは2024年3月14日。宇宙船はブースターから分離して宇宙空間に到達し、約1時間飛行しました。予定していたインド洋には着水しませんでしたが、前2回に比べると前進しており、マスク氏は同日、Xに「軌道速度に到達した。おめでとう」とコメントし、NASAのビル・ネルソン長官もXで「試験飛行の成功おめでとう」と投稿し、この成果を称えました。

既存の衛星通信の欠点

マスク氏の事業家としての優れた点は、ロケット開発や打ち上げのみならず、通信事業という地上のビジネスにつなげ、成果を挙げていることです。 地球上のほぼ全域での衛星インターネットアクセスを可能にするStarlink(スターリンク)事業の開発は2014年に始まり、2018年にプロトタイプのテストフライト衛星2機を打ち上げました。2019年5月には、商用サービスに向けた大規模な打ち上げが実施され、60機の運用衛星が配備されました。現在では、5000機以上の衛星が低軌道で運用され、衛星コンステレーション(衛星群)を構成しています。

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