兼松、「ICTと半導体分野」で打つ2027年への布石 グループ一体運営に半導体では「落ち穂拾い」も
東洋経済オンライン / 2024年8月1日 7時0分
「われわれはアメリカのサイバーセキュリティー専門ファンドに出資しており、アメリカのスタートアップを日本に紹介して市場展開してきた。これからのわれわれの役割は、日本のセキュリティー技術を海外に広めることだ」
7月29日に開かれた会見でそう述べたのは、大手商社・兼松の宮部佳也社長だ。
兼松はセキュリティーサービス企業などと、日本初となるセキュリティー企業への投資に特化するファンドを設立。この日は出資者のお披露目会見だった。会見には宮部社長とともに、兼松のIT関連子会社・兼松エレクトロニクスの渡辺亮社長の姿があった。
羊毛貿易が祖業の老舗商社である兼松で、現在、全社利益の約4割を稼ぎ出すのがICTソリューションだ。ITを基盤とした企業の情報システムに関する設計・構築、運用サービス、システムコンサルティングなどを行っている。同事業ではサイバーセキュリティー分野にも力を入れている。
兼松は今年4月、電子・デバイス部門の一部だったICTソリューション事業を「部門」に独立・昇格させた。背景にあるのは、企業のセキュリティー対策やネットワーク構築の旺盛な需要だ。
サイバーセキュリティーを「入り口」に
ICTソリューション部門長に就任したのは、2019年から兼松エレクトロニクスの社長を務める渡辺氏だ。兼松の執行役員にも同時に就いた。ICTソリューション部門の中核会社は兼松エレクトロニクスだ。昨年5月、兼松が完全子会社とした。狙いはグループ一体運営の強化にある。
「サービスの外販という意味ではこれまで兼松とはほとんど付き合いがなかった。兼松の全顧客にさまざまな提案を行っていく。対象は2万社だ」
渡辺氏が力を込めて語るように、全部門の顧客から潜在需要を掘り起こし、サービス拡販につなげる戦略を描いている。すでに各部門より提供された顧客リストから108社をピックアップ。サイバーセキュリティーを「入り口」に営業をかける。
兼松エレクトロニクスはITインフラ基盤のサブスクサービスに注力しているが、これを海外にも広げる。同サービスを利用する顧客が海外進出する際、当然国境をまたいだセキュリティー対策も必要になる。兼松の海外拠点を活用すれば、こうした需要を幅広く取り込んでいくことができる。
国内でも攻勢をかける。兼松エレクトロニクスは昨年10月に熊本県大津町に熊本営業所を開業した。言うまでもなく、半導体受託生産で世界最大手の台湾TSMCの新工場建設・稼働にともなう半導体周辺企業のIT機器需要を取り込むためだ。
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