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犬をデキ愛「徳川綱吉」令和にも通じる深い信念 生類憐みの令の印象が強いが、意外な一面も

東洋経済オンライン / 2024年8月2日 11時30分

もし、事実ならば、完全に僧のデタラメに乗せられたことになるが、「生類憐みの令」のヤバさは、その中身だ。

動物を傷つけた人は、わざとではなくても、島流しにされたり、切腹を命じられたりするという、メチャクチャなもの。人々は魚や鳥を食べることもできなくなり、釣りさえも禁止。動物を飼うこともダメだということに……。

動物のなかでも、特に犬を大事にしたため「犬公方」と呼ばれた綱吉。後世からもバカにされた「トンデモ将軍」として有名だ。

しかし、近年においては、また違った評価がされているようだ。

確かに「生類憐みの令」は社会の混乱を招いた。

そんなメチャクチャな法律を作った綱吉は、いかにもヤバい人物と思われそうだが、彼と面会したドイツ人医師のケンペルは、意外にも高く評価する記録を残している。

「綱吉は偉大なリーダーだ。祖先からの美徳をしっかり受け継いで、法律をきちんと守り、人々に対しては、とても優しく情にあふれた人物である」

動物を守るためなら人を死刑にもするような綱吉が「優しく情にあふれた」とは、一体どういうことなのか?

また、こんなこともあった。大老の堀田正俊が、江戸城の外を歩いていると、泣いているふたりの子どもの姿が目に入った。衣服がボロボロでお金がないらしい。

心を痛めた正俊は助けたかったが、こんなふうに考えて、素通りすることにした。

「大老という役職に就いている私の仕事ではない」

というのも、江戸幕府では「どの部局がどんな仕事をするのか」ということが、はっきりと決まっており、担当でもない仕事をするのは、かえって迷惑になると考えられていたからだ。

しかし、正俊が綱吉にそのことを話すと、綱吉はこう言った。

「貧しい者を救うことを<自分の仕事ではない>と考えたとすれば、心の迷いのあらわれだ。人間愛を発揮するのに、事の大小は関係ない。太陽と月は、どんなに小さなものでも照らしているではないか」

このエピソードを見る限り、確かに、綱吉は慈悲深い君主だ。人の命を軽視するような人物だとは思えない。

近年の研究によると、「綱吉に子どもができず、相談したお坊さんの言葉を信じて、生類憐みの令を出した」というのは、デマだとされている。

『三王外記』という、かなり内容が怪しい書物で書かれた綱吉の話が、後世で拡散してしまったようなのだ。

では、なぜ綱吉は「生類憐みの令」のようなトンデモな法律を出したのか。

綱吉の理想だった「儒学」の教えが背景

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