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TGV施設破壊で混乱、パリ五輪の「鉄道輸送」事情 地下鉄は運賃2倍に、市民はどうしている?

東洋経済オンライン / 2024年8月2日 7時30分

フランスのアタル首相は、こうした利用者需要がピークに達する日を狙って、意図的な破壊行為が起きたことに対し、犯行について「準備され、調整された破壊工作」と強く非難した。

専門知識ある者の犯行?

今回の事件は、列車そのものを脱線させたり、線路を破壊したりという行為とは異なり、目立たないものの鉄道の生命線である通信ケーブルを破壊するという巧妙なものだ。いわゆるテロリストによる殺人行為とは異なり、直接の人的被害がなかった。

フランスではかねて労働者の実力行使、ストライキが日常的に起きており、鉄道事業をめぐっては、労使闘争が長年にわたってやまないという問題を抱えている。農民が自分たちの主張をより強く伝えるため、トラクターで高速道路をふさぐデモを行って社会的な注目を得るといった行動も起きている。今回の鉄道施設の破壊行為は、いわゆる鉄道を標的としたテロというよりは、こうしたデモなどの延長線上にありそうな感じも受ける。

ジェラルド・ダルマナン内相は、攻撃の方法が「極左が行う伝統的なもの」と述べ、政治的な主張が背後にある可能性を示唆した。事件発生から3日目の7月28日、フランス北西部の鉄道施設の近くで不審な行動をしていた「極左過激派」とみられる男が警察に拘束されたが、この男が直接事件に関与している証拠はまだ見つかっていない。

犯行声明は7月末時点で出ておらず、犯人像は不明なままである。高度な専門知識と技術を持つ者によって計画・実行されたものとみられ、鉄道関係者が関与している可能性もありそうだ。

鉄道への破壊行為は五輪開会式へ向かう世界各国からの訪問者の足を奪ったが、一方でパリ市民らは五輪開催地の地元から「脱出」した人が多い。パリに住む知人たちに、五輪が開催される中での夏の過ごし方について聞くと、異口同音に「交通の混乱や予期せぬ暴力行為などに巻き込まれるのは嫌」「街がごちゃごちゃするので、ここを離れる」という声が大勢を占める。

パリを含む首都圏・イル=ド=フランス地域では、五輪およびパラリンピック期間の9月8日まで、域内を走る地下鉄(メトロ)、バス、トラム、そして都心と郊外を結ぶ電車「RER」の運賃が一時的に2倍近くまで引き上げられている。普段ならメトロは1乗車2.10ユーロだが、期間中は4ユーロだ。

これまでの夏季五輪は、開催都市内に1つのメイン会場を設けてそのエリアに競技施設を集める形で実施されることが一般的だった。一方、今回のパリ五輪は、市内の複数個所に仮設会場を設けた。市民が普段の生活を送っている場所に多くの観衆が押しかけることになるため、人流をいかにコントロールするかが課題となる。値上げはその一環だ。

期間中の地下鉄運賃はほぼ倍額に

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