トッププロの使用率9割、日本製ゴルフ道具が熱い 「電線のフジクラ」がシャフトを作り始めた理由
東洋経済オンライン / 2024年8月3日 7時0分
使用するカーボン繊維シートは、形状や長さ、スペックが違うものを20枚近く組み合わせる。この巻くという作業には製作者の熟練度や器用さが必要で、日本の職人の技術力が生かされている。
藤倉コンポジット株式会社・ACP事業部営業部プロモーションチームリーダー・飯田浩治氏は、こう説明する。
「カーボンシャフト製造は、手作業でいろいろな形状のカーボンシートを設計通りにミリ単位で巻いていくため、機械化できない。こうした職人技は、手先が器用な日本人が得意とするところです。日本品質が生かされるところなので、国内メーカーの評価が高くなっているのだと思います」
なぜ電線の会社がゴルフのシャフトを?
海外で特に強みを発揮しているのが、フジクラだ。飯田氏は「アメリカのメーカーへシャフトを供給することをきっかけに、1994年に現地法人を設立した。アメリカのツアー選手の要望を取り入れ、現地でシャフトを開発している」と話す。
ところで、フジクラといえば、“電線の会社”だとイメージする人が多いかもしれない。なぜ電線の会社がゴルフのシャフトを作っているのだろうか。
現在、電線を含む情報通信などの分野は株式会社フジクラが、ゴルフクラブのカーボンシャフトなどの分野は藤倉コンポジット株式会社が担っている。そのルーツは同じで、藤倉善八が電気の将来性を感じ、それまで根掛けや羽織ひもなどを作っていた技術を生かし1885年に絹や綿糸などで被覆した電線製造を開始したことに始まる。
1893年に日本で初めてゴム被覆線の製造を開始し、その後、その技術を生かし電線やゴム引き防水布を製造。1910年には電線部門、ゴム部門を分離し、電線部門は藤倉電線株式会社(現:株式会社フジクラ)、ゴム部門を藤倉合名会社防水布製造所(現:藤倉コンポジット)へと発展させた。ゴム部門は複合化技術を生かし、履物、工業用ゴム製品、電気絶縁材料など多用な製品を開発製造している。
その中で、複合化技術を生かして、スポーツ分野にも進出したのがゴルフシャフトだ。1974年に製造販売を開始し、2023年にはゴルフシャフト事業50周年を迎えた。
開発を始めることになった経緯について、飯田氏は、「きっかけは、当時の松本重男会長が、アメリカでゴルフのカーボンシャフトを知り、自社でできないかと考えた」と話す。
松本会長のゴルフの腕前は相当なもので、アマチュアではあるものの実力はトップクラスだった。そんな背景もあり、自社製のシャフトを求めたようだ。
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