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国枝慎吾「金メダル4回」叶えたメンタルの鍛え方 こうして車いすテニス界のレジェンドになった

東洋経済オンライン / 2024年8月3日 15時0分

「なりたいとか、なれるとか、というより、自分が1位だというマインドで臨むよう、心がけなさい」

アンのカウンセリングを受けた選手は、国枝のほか、3人ぐらいいた。吉田は振り返る。

「その中で慎吾くんが一番、すんなり反応した。アンとの言葉のキャッチボールがうまくはまった。人の言うことを自分なりにかみ砕き、理解して、とりあえずやってみようという行動力が慎吾くんの長所だと思う」

アンの問いかけは続いた。

「世界1位というのはどういうイメージだと思う?」

言葉で端的に表現するのは難しい問いかけだ。

アンは、いろいろ具体化する質問を続けていった。

理想の自分へと変えていく「アファメーション」

そして、「アファメーション」の作業に入った。アファメーション(affirmation)を英和辞書で引くと、「肯定、確認、断言」と訳される。その言葉を唱えることで自分を変えていくメソッドだ。

人間は1日のうち、何万回も自問自答しているという。そのほとんどは無意識に繰り返され、その心の声は顕在化されない。だから、肯定的なキーワードを内面に語りかけ、イメージを膨らませる。信念として固め、行動に変える。理想の自分へとアップデートするために。

言ってみれば、「なりたい明日の自分になるための自己宣言」だ。

アンは国枝が抱くイメージにしばらく耳を傾けた後、いくつかのワードを提示した。

その中に「I am invincible」があった。

直訳すると、「私は無敵だ」が思い浮かぶ。吉田がどの日本語の表現が一番しっくり来るか、いくつかワードを出していった。

「無敵」を挙げたとき、国枝の顔つきを見ると、どうもしっくり来ていない様子だった。

「最強」を出すと、国枝の反応に変化があった。「それだ。それですね」。

当の本人に、記憶をたどってもらった。

「なんか、無敵だとしっくり来ないと言った記憶はありますね。ちょっと子どもっぽい響きを感じたんですよね。仁子さんがいくつか日本語を挙げていき、最強だ、がピンと来たというか、これだ、と思いました」

恥を捨てた絶叫

キーワードは決まった。これで、一安心。セッション終了……、とはいかなかった。

アンはその場で叫べ、と指示した。戸惑いつつ、国枝が口を開く。

「オレは最強だ」

声が小さかった。やり直し。2度目も、アンからダメ出しをされた。

「もっと叫んで!」

国枝は追い込まれた。周りには、そのときの車いすテニス男子のトップ選手もいた。

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