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病院が「患者さま」と呼ぶのをやめ始めた深い事情 横行する「カスハラ」看護師の手を舐める患者も

東洋経済オンライン / 2024年8月4日 11時0分

日本看護協会は、看護職員が暴力やハラスメントを受けたかどうか実態を調査している。「病院および有床診療所における看護実態調査」(2019年)によると、全国の病院8300施設の看護職員を対象に、1年間に受けた暴力・ハラスメントの内容を複数回答で聞いたところ、精神的な攻撃(24.9%)が最も多く、次いで身体的な攻撃(17.9%)となった。

日本看護協会で労働政策を担当する橋本美穂常任理事は、こう話す。

「協会として、人々の生活を支えるために必要不可欠なエッセンシャルワーカーである看護師を守っていくために、実態を把握するよう努めている。出産・育児で一時的に現場を離れた看護師は戻ってくる可能性があるが、カスハラで傷ついた看護師は、対応を間違えると二度と現場に戻ってこない。貴重な人材を失うことになるので、カスハラ対策は切羽詰まった問題になっている」

また、患者の自宅などを訪れる訪問看護師の3~4人に1人の割合で、身体・精神的、セクシャルハラスメントを受けていたことがわかった。

全国訪問看護事業協会が2019年3月に発表した「訪問看護師が利用者・家族から受ける暴力に関する調査研究事業報告書」では、3245人に過去1年で利用者・家族から暴力などを受けたかどうか聞くと、精神的暴力が36.1%、セクシャルハラスメントが31.7%、身体的暴力が28.8%という結果だった。

橋本常任理事は、「看護師はどうしても患者や施設利用者に密着してケアすることが多いので、不必要に触られたりだとか、採血の際に手を舐められたりだとかの訴えもある。病棟の夜勤帯や在宅訪問時など、比較的周りに人がいないところで起きている」と話す。

加えて、看護師が業務に支障の出るカスハラに遭ったことを上司や施設管理者などに報告しても、「お客さまなのだから我慢しろ」などと、何も対策を講じることなく勤務を続けさせることも多いという。

カスハラ対策をする病院が9割

日本看護協会は、病院などの施設にカスハラ対策を講じているかどうかも調査している。

2019年の病院看護実態調査によると、3385病院のうち対策をとっている病院が72.2%(2443病院)、準備中の病院が16.7%(565病院)で、9割近くがカスハラ対策に取り組んでいる。

例えば、新潟県の県立中央病院やがんセンター新潟病院、新発田(しばた)病院、十日町病院など11病院を運営する同県病院局は、今年5月、ペイシェントハラスメント対策指針を整備した。

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