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病院が「患者さま」と呼ぶのをやめ始めた深い事情 横行する「カスハラ」看護師の手を舐める患者も

東洋経済オンライン / 2024年8月4日 11時0分

対策指針をとりまとめた背景には、各病院において、患者から職員に対して過度な迷惑行為が発生していることがある。女性職員への嫌がらせや、病院内の備品を投げつけるなどの迷惑行為により、職場環境が悪化し、パフォーマンスが低下する懸念があったからだ。

対策指針には、▽組織的に対応する▽毅然と対応する▽警察への相談・通報をためらわない、を3本の柱とした。

同県病院局は「組織的に対応すると明記したことで、職員の安心感につながることを期待している」と説明。そのうえでこう述べる。

「診療拒否については、弁護士に法的観点から助言を得たうえで記載した。医療行為は、医療者側と患者側の信頼関係を基礎とするとの考え方があるため、患者側の迷惑行為により信頼関係が喪失したときには、医療者側が診療拒否することも可能だと考えている」

指針ではペイシェントハラスメントを9パターンに分類し、具体的な例も挙げた。それが以下の図だ(※外部配信先では閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。

病院への「出入り禁止」も明記

暴力型に対しては、行為者から危害を加えられないよう、一定の距離を保つなど、安全確保を最優先し、診療時間内なら担当部署に連絡、保安員や複数職員が駆け付けるとともに、迷わず110番するとしている。

セクハラ型については録音・録画による証拠を残し、病院職員や患者・家族に事実確認をしたうえで、加害者に警告。執拗なつきまとい、待ち伏せに対しては、病院への出入り禁止を伝え、繰り返す場合には、弁護士や警察に相談するとしている。

権威型への対応としては、土下座を強要されても正当な要求を越えた範囲であるため、応じなくてもいいとしている。

特筆すべきは、医師法19条1項の「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」とする、いわゆる“応召義務”にまで踏み込んだことだ。

医療の現場で応召義務の話が出ると、診療を拒否する“正当な事由”が焦点になる。

ペイシェントハラスメントによる診療拒否について、同病院局は厚労省通知などを参考にしたうえで、「患者への診療に緊急性がなく、代替する病院などが存在する限り、拒否された(患者)側の法律上保護されるべき何らかの権利、または利益が侵害されるわけではない」として、信頼関係の喪失は診療拒否の正当事由となり得るとの考えを示している。

改めて問われる“患者の権利と責任”

カスハラと、患者の権利――。この両方をどう考えていくべきか。

長野県佐久市の佐久総合病院の玄関の患者からよく見える場所に、“患者さんの権利と責任”と題した横長の看板がある。

40年以上前の1983年(昭和58年)1月に掲げられ、今にいたる。このように患者の権利と責任(責務)を表明する動きは、その後、全国に広がっていった。

そこには、患者の権利として、▽適切な治療を受ける権利▽人格を尊重される権利▽プライバシーを保証される権利――などが明記される一方、「患者さんも病院から指示された療養については、専心しこれを守ることを心がけなければならない。医師と協力して療養の効果をあげることこそが大切なのである」としている。

カスハラが問題となっている今、患者と医療者の信頼関係があってこそ医療が成り立つことを、今一度、認識するタイミングなのかもしれない。

君塚 靖:えむでぶ倶楽部ニュース編集部 記者

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