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「社員が訴えられた」とき会社はどうするべきか 「懲戒権の行使」がトラブルを招くこともある

東洋経済オンライン / 2024年8月5日 14時0分

この場合、②については、昨今のプライバシー保護の趨勢に鑑み、会社内秩序の保持とのバランスを考えつつ、どこまで違法・不正行為の内容を周知するか(たとえば、具体的人物名などは多くの場合、非開示とされるでしょう)を検討する必要があります。

それ以上に、会社内において新たなトラブルが生じ得るのが①です。以下の項で詳述します。

(3)懲戒権の行使に伴うトラブル

違法・不正行為を行なった社員に対して、会社が懲戒処分を下すことは少なくありませんが、当該懲戒処分が法的に争われるケースも多々見られます。

人事上の懲戒処分については、その処分が法的に有効とされるためには、

①会社に懲戒権が存すること(実務上の問題としては、就業規則に懲戒事由、懲戒処分の内容・手段が明記されているか)

②下された懲戒処分が、「労働者の行為の性質および態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合(労働契約法15条)」ではないこと

が要件と解されます。

殊に、社員の違法・不正行為に関連して実務上問題となることが多いのが②です。

すなわち、社員の違法・不正行為に関しては、それが業務に関連して為されたもの、たとえば職場内での窃盗、ハラスメント等であれば、会社の秩序違背の程度が明瞭であり、会社としても、その秩序違背の程度を勘案して懲戒処分の程度を判断することは比較的容易です。

しかし、違法・不正行為は業務外で為されることも少なくありません。たとえば通勤電車内での痴漢行為、私的活動での飲酒運転等が挙げられるでしょう。

このような、いわば私行での非違行為に関しては、会社の事業活動に直接関連を有するものおよび会社の社会的評価の毀損をもたらすもののみが懲戒の対象となり得るに過ぎないため、懲戒権の発動について厳しくチェックされることとなります。

「私行における非違行為」に対する裁判例

最近の裁判例でいえば、児童ポルノの公然陳列罪で罰金刑に処せられたことを理由とする懲戒解雇について、一審(大津地裁平25・3・5判決)では解雇無効、二審(大阪高裁平25・9・24判決)では逆転で解雇有効とされた事案があります。

この事案の特性(さらには二審で解雇有効とされた要因)としては、この犯罪の報道では会社名は明かされていなかったものの、

●被解雇者の実名を伴う報道が複数され、その氏名によるインターネット検索の結果からすれば、結果的に本件犯行をした被解雇者が当該企業の従業員であると推測することは可能といえること

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