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「社員が訴えられた」とき会社はどうするべきか 「懲戒権の行使」がトラブルを招くこともある

東洋経済オンライン / 2024年8月5日 14時0分

●当該企業は、児童ポルノに対し日本より厳しい立場を取っている国を含む海外の取引先も多く、そこから企業の社会的責任(CSR)を強く求められるような状況にあったこと

等が挙げられます。

逆にいえば、これらの点の評価が重くなければ、解雇につき一審の如く消極的な判断が為されることもあり得るところです。

これまでの、社員の私生活上の非行に関する裁判例を図にしましたので、参照ください。

※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

実務上の留意点

前記①のとおり、社員の純然たる私生活上の違法・不正行為に対する懲戒処分を行なう場合、まずは、そうした私的行為であっても懲戒に処することがある旨、就業規則上の懲戒事由のなかに明記していなければなりません。

無論、そうした事由によりどのような懲戒処分が科されることがあるかについても同様です。実務上、多く見られる規定例としては、

●会社外において、会社の名誉または信用を毀損したとき

●会社内外を問わず刑法その他法令に違反する行為をしたとき

等が挙げられます。

また、近年、社会的批判が高まっている飲酒運転については、特に「飲酒運転(酒気帯び運転を含む)、ひき逃げ、その他交通法規に触れたとき」といった規定を置く例も散見されます。

懲戒処分事由が規定されている場合でも、実際の懲戒処分の発動、重さについての判断には、純然たる私的行為の場合は、業務上の行為の場合に比較すれば慎重さが求められることとなります。

具体的には、事実関係をよく調査することが出発点となりますが、その際には、できるだけ本人に弁明の機会を与えることが望ましいです(特に、解雇のような重度の処分を考える場合)。

この点、違法・不正行為を行なった社員が逮捕・拘留されており、会社関係者が容易に事情を聴取できないということもあります。

その場合は、接見の手続きや当該社員の代理人を通した事情聴取、場合によっては起訴されるのを待って起訴事実による事実確認、といった手法を適切に選択することが重要となります。

そのうえで、類似の裁判例を調査・分析し、可能なら、第三者の意見を聴取しながら、法的なリスクと会社の秩序・信用の維持との均衡を考えて、処分内容を決定することが肝要です。

岡芹 健夫(おかぜり たけお) *公式サイトはこちら
弁護士法人髙井・岡芹法律事務所 代表社員弁護士。第一東京弁護士会労働法制委員会委員、経営法曹会議幹事および一般社団法人日本人材派遣協会監事等。使用者側・経営者側・会社側の立場から、人事労務・労使問題・労働問題等を取り扱う。主な著書に、『労働法実務 使用者側の実践知〔LAWYERS’ KNOWLEDGE〕第2版』(有斐閣)等。

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