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「世界から遅れている」日本の新薬開発3つの問題 コロナワクチンでも露呈、解決には何が必要か?

東洋経済オンライン / 2024年8月6日 12時0分

理化学研究所のスーパーコンピューター「富岳」が日本のAI創薬のカギを握る(写真:bee/PIXTA)

新型コロナウイルスのパンデミックは、各国の薬の開発能力の差も浮き彫りにした。ファイザーやモデルナなど海外の製薬企業がいち早くワクチンを開発・供給したのに対し、国産のワクチン接種が始まったのは、昨年の12月だ。

【写真で見る】後れを巻き返せ!日本のAI創薬のカギを握るスーパーコンピューター

技術大国だったはずの日本は、なぜこんな状況になってしまったのか。

AI創薬にかかわる伊藤眞里氏(大阪大学薬学部薬学研究科・創薬サイエンス研究支援拠点化合物ライブラリー・スクリーニングセンター特任教授)に聞いた。

なぜ日本ではAI創薬が進まないのか

医薬品の開発において最も重要なのは、病気を引き起こす原因となる、あるいは治療に関係する“特定のタンパク質”を見つけることだ。

これまでは研究者の仮説に基づき、実証を繰り返す手法がとられていた。ターゲットとなる化合物は2.5万に1つも見つかればラッキーというほど、低い確率だった。

対して、近年のAI創薬は、AIに膨大なデータを学習させることで、仮説-実証の工程が大幅に省略されるため、創薬スピードが劇的に加速した。また、ヒトによる思い込みや先入観がなくなったことで、スピードだけでなく精度も格段に上がった。

ただ、「従来の創薬でも海外に差をつけられている日本ですが、AI創薬でも後れを取っています」と伊藤氏はいくつかの理由を挙げる。

その1つは、創薬の研究開発に十分な資金が投じられていない点が挙げられる。

創薬に対する研究費・予算が日本と海外では大きく異なる。例えば、武田薬品工業の2023年度の研究開発費は7299億円。一方、ファイザーは106.79億ドル(約1兆6417億円※1ドル153.735円で計算) だ。

2023年度の研究開発費では業界トップのメルクの305.31億ドル(約4兆6937億円)を筆頭に、ロシュ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ノバルティス、アストラゼネカ……など、世界のメガファーマは100億ドル以上を研究開発費に使っている(各メーカーの費用は報告書より抜粋)。

「パンデミックの際も、国がどう捉えるかの違いもありますが、アメリカでは防衛費がワクチンの生産に充てられました」と伊藤氏は言う。

医療情報が活用できない日本

2番目は、患者の医療情報が海外のように活用できない点である。

海外では個人情報保護法に基づき、患者の医療情報が国によって管理されている。欧州は、EUでまとまった1つのプラットフォームを作っていて、製薬企業がこれらの情報にアクセスできるようになっているのだ。

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