日本の現場を殺した「3つの過剰」という根本問題 組織を強くする「本当に必要な管理」とは?
東洋経済オンライン / 2024年8月7日 12時0分
ダイハツの現場では、短納期での開発・生産が至上命令となり、こうした無理が、車両開発の最終工程である認証試験に押し付けられた。
もちろん、短期開発自体が悪いわけではない。開発プロセスを短縮し、無駄なコストを省く企業努力は必要だ。
しかし、開発期間が圧縮されたからといって、そのプロセスでなすべき機能や業務が損なわれてしまったのでは、元も子もない。
ダイハツの事案では、2011年から品質保証などの部署の人員を減らしはじめ、衝突試験を担う安全性能担当部署の2022年の人員数は、2010年に比べ3分の1に減っている。
「開発期間を短縮しろ」「もっとたくさん生産しろ」と号令をかける一方で、「コストを減らせ」「人を減らせ」と追い立てまくる。
商品開発のスピードアップ、商品やサービスの品質向上など、企業の優位性に直結する多くの要素が、現場力によって規定される。
そこには歴然とした「能力格差」があるのだが、ダメな経営者は「問題が起こる理由」や「自社が劣っている理由」を「現場の怠慢のせい」だと短絡的に認識する。
現場への「過度な負荷」「不適切な圧」は「経営陣の想像力が欠如している」と言わざるをえない。
敬愛する一橋大学名誉教授である野中郁次郎先生は、かねて日本企業が抱える病巣のひとつとして、次の「3つの『過剰』」を指摘している。
①オーバー・アナリシス(過剰分析)
②オーバー・プランニング(過剰計画)
③オーバー・コンプライアンス(過剰規則)
つまり、分析をやりすぎ、計画策定ばかりを何度も練り直し、さまざまなルールや規則で組織を縛る。これらが日本企業から行動力、実行力を奪い、組織のダイナミズムの喪失を招いた。
経営管理において大事なのは「計画を練ること」ではない。「事実に基づく議論」 である。
「不正が行われる理由」は明白
試験不正が発覚したダイハツで調査に当たった第三者委員会は、「『現地現物』がなかったのが大きな原因」と指摘した。
トヨタでは、現地を訪れて実際にものを確認してから物事を判断するという「現地現物」という言葉が、創業時から大切にされてきた。
しかし、その思想はダイハツでは十分に浸透していなかった。 第三者委員会の報告書には、次のようなことが記載されている。
「管理職が多忙で、現場の業務や実情を理解する余裕がなかった」
「相談にいっても『どうするんだ』『間に合うのか』と詰問されるだけで、親身になってくれない」
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