スキル向上のために退職は嘘?辞める若手の本音 賃上げできずにどんどん社員が辞める企業も
東洋経済オンライン / 2024年8月8日 16時0分
経団連が発表した2024年春闘の第1回集計によると、大手企業の月給の賃上げ率は5.58%で、比較可能な1992年以降で過去最高を記録するなど、世の中の賃上げムードが高まっています。一方で、実際には賃上げしたくてもできない企業が多く存在します。
賃上げは社員の定着率にも直結する重要な問題です。賃上げできないことで社員がどんどん辞めてしまう企業が、負のスパイラルから抜け出すにはどうすればよいのでしょうか? 社会保険労務士の馬場順也氏が解説します。
賃上げできずに社員が辞めていく会社の事例
「大変お世話になったのに申し訳ないのですが、もっと多くのことに挑戦してスキルを磨きたいので、退職することを決意しました」。そう言ってきたのは28歳の男性社員Aさん。
仕事をしっかりこなし社内でも評判がよく、新入社員の手本になるような人物でした。上司のBさんは内心「またか……」と思いながらも話を聞いていくと、やはり退職を決めた本当の理由は別にありました。
「仕事にやりがいは感じるが、今の給料では彼女と結婚することが難しい」、「転職先では住宅手当などの手当もあり、年収が100万円以上もあがる」、「ベースアップや昇給がある」。
Bさんの会社では近年、表向きの退職理由はスキルアップや家業の引き継ぎなどですが、実際は待遇の悪さに嫌気が差して辞めていくケースが増えてきていたのでした。
待遇の悪さを理由に転職するケースはこれまでもありましたが、近年は特に増えています。
主な原因は3つあると考えられ、1つ目は大幅な賃金の引き上げを行う会社が増えていることです。
日本経済団体連合会が2024年5月に発表した春季労使交渉の調査では、定期昇給を含めた月例賃金の引き上げ率は5%超で、引き上げ額は1976年以降で最高を記録したと公表しています。
また、調査対象に中小企業の割合も多い日本労働組合総連合会の春闘の中間まとめでも定期昇給込みで5%超になったと公表しています。
大幅な賃上げがこれほどニュースで数多く取り上げられ、「春闘で満額回答」などの言葉が躍るなかで、自身の会社で賃上げの話が出なければ、会社に対して不安を感じてもおかしくはありません。
2つ目は少子高齢化で労働力人口が減り、売り手市場になっているということです。ステップアップのために転職をすることも当たり前になりつつあります。
テレビでは転職を促すCMが多く流れるようになりました。大手求人サイトには「転職後に年収が増加した人が〇割」「前職と比べて平均〇万円以上年収が増加している」などと転職を勧める広告が並びます。そのような数字を見ると転職するか心を揺さぶられることでしょう。
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