トランプはアメリカを滅ぼすからこそ「英雄」だ 臨界点に達する「追い詰められた白人」の絶望
東洋経済オンライン / 2024年8月8日 11時0分
会田氏の議論は多岐にわたるものの、要点はいたって単純。
トランプはアメリカの正当性を否定する「にもかかわらず」支持されるのではなく、正当性を否定する「からこそ」支持されるのです!
見捨てられた人々の逆襲
どうして、そういうことが起きるのか。
この理由も明快です。
自国のあり方に絶望したあげく、正当性を見いだせなくなったアメリカ人が増えたため。
背景にあるのは、新自由主義型グローバリズムを長らく推し進めたことによる格差の恐るべき拡大です。
これにより自由民主主義の基盤となってきた中間層が崩壊、大勢の人々が貧困に追いやられました。
とくに追い詰められたのが、白人の労働者階級。
音楽評論家デイヴ・マーシュの表現にならえば、「際立った人種的特徴や文化的特徴を持たない、どこにでもいる無名のアメリカ人」です。
社会の主流派と見なされつつも、彼らはずっと、豊かで華やかな「アメリカ的生活」から締め出されてきました。
マーシュいわく、「ロマンティックに美化され、民主主義の屋台骨と讃えられるが、自己主張の機会などほとんど与えられたためしがない」。
裏を返せば、何かのきっかけで激しく爆発する可能性をはらんでいます。
すでに1970年代、これらの人々は「ミドル・アメリカン・ラディカルズ」(急進的な不満を抱えた中間層)と位置づけられていました。
それが困窮したうえ、格差の固定化が進んだせいで「いつかはこの状態を抜け出せる」という希望までなくしてしまう。
近年の白人労働者階級では、自殺や薬物中毒、過度の飲酒による肝疾患など、自暴自棄になったとしか思えない死に方をする者が増えており、「絶望死」という呼称まで生まれています。
しかるにトランプは2014年、こう語っているのですよ。
「アメリカの問題を解決する方法がわかるか? 経済が崩壊し、地獄さながらになって、すべてがメチャクチャになればいいんだ。そうすれば暴動が起きる。こうしてわれわれは、国が偉大だった頃の状態に戻るのさ」(英「インディペンデント」紙、2020年6月2日付配信記事)
今の社会の正当性を否定すれば、古き良き時代に戻れる!
生きる気力をなくすほど絶望した貧しい白人に、この言葉がどう響くか。
わが意を得たりと、喝采したくなって当然でしょう。
彼らの生活は、現に崩壊してメチャクチャになっているのです。
会田氏は関連して、重要な指摘をしています。
過去2回の大統領選挙において、トランプが制した地域には、さびれて停滞しているという顕著な特徴が見られたとのこと。
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