トランプはアメリカを滅ぼすからこそ「英雄」だ 臨界点に達する「追い詰められた白人」の絶望
東洋経済オンライン / 2024年8月8日 11時0分
とまれ、トランプが根強く支持されるのには、経済と思想の両面において相応の理由が存在するのです。
トランプはゴジラではなく「ダミアン」だ
『それでもなぜ、トランプは支持されるのか』の冒頭、会田氏はトランプをゴジラになぞらえました。
何度撃退しても、繰り返し現れるからというわけですが、なぞらえる対象としてより適切なのは、1976年に大ヒットしたホラー映画『オーメン』の主人公ダミアンでしょう。
ダミアンは悪魔の子。
世界を滅ぼす使命を負っており、アメリカのエリート外交官ロバート・ソーンの家庭に入り込む。
しかるに幼少期から、周囲では人々が無残な死を遂げます。
事の真相を知ったロバートは、ダミアンを倒そうとするものの、土壇場で逆に殺されてしまう。
そして映画は、悪魔の子が大統領夫妻に引き取られる(つまりホワイトハウス入りを果たす!)ことを暗示して終わります。
これはトランプの名誉を貶めるものではありません。
世界を滅ぼすから邪悪だというのは、既存の秩序の正当性を擁護しようとする者の発想であり、くだんの正当性を否定する者にとっては、ダミアンこそ賞賛されるべき英雄なのです。
だいたいダミアンの勝利にたいし、観客がどこかで共感しなければ、映画が大ヒットするはずがない。
カナダの評論家ロビン・ウッドのコメントをどうぞ。
「悪魔の子がエリートの世界を着々と滅ぼすさまを、観客はひそかに楽しんでいるのだ。『社会が滅びるのを見たい。本当に滅んだって構うものか』という気持ちが人々になければ、『オーメン』は意味をなさない」(ロビン・ウッド『ハリウッド──ベトナムからレーガンまで』、コロンビア大学出版部、アメリカ、1986年、88ページ。拙訳)
だがお立ち会い。
アメリカの政治コメンテーター、タッカー・カールソンはこう喝破します。
「幸せな国がドナルド・トランプを大統領に選んだりするものか。そんなことをするのは絶望した国だけだ」
トランプはアメリカを滅ぼすからこそ英雄なのです。
国の正当性が破綻をきたし、絶望した人々が大勢いるからこそ支持される。
むろんそれは、アメリカが機能不全の瀬戸際にあることの表れ。
きたる大統領選挙の結果がどうなろうと、この点は変わりません。
そして戦後日本が、アメリカへの従属を一貫して決め込んできたのを思えば、これはわが国も機能不全の瀬戸際にあることを意味するのです。
佐藤 健志:評論家・作家
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