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トランプはアメリカを滅ぼすからこそ「英雄」だ 臨界点に達する「追い詰められた白人」の絶望

東洋経済オンライン / 2024年8月8日 11時0分

繁栄から取り残され、見捨てられた人々の逆襲こそ、トランプ人気の本質だと評さねばなりません。

われわれはアメリカに打ち勝たねばならない

同時に注目すべきは、アメリカという国のあり方をめぐるタテマエとホンネのギャップも、かつてなく拡大したこと。

これを思想史の立場から考察しているのも、会田氏の本の特色です。

自由と民主主義、個人主義の理念のもと、世界中の人々を受け入れ、万人に平等なチャンスを与える国。

アメリカの一般的なイメージは、このようなものでしょう。

けれども同国は本来、白人のキリスト教国家であり、当初は奴隷制も容認されていた。

20世紀半ばになってなお、多くの州では異人種間の結婚が法で規制されていたのです。

世界の他の地域と関わらない「孤立主義」の伝統もあれば、地域の共同体を重視する傾向も根強く見られた。

男性優位主義も当然、つけ加えねばなりません。

まさにタテマエとホンネ。

アメリカの正当性は、両者のバランスの上に成り立っていたのです。

ところが過去数十年、タテマエがホンネを圧倒してゆく。

理由は例によって単純明快。

新自由主義グローバリズムを推進したうえ、冷戦の勝利を受けて世界の一極支配までめざしたからです。

とはいえこうなると、ホンネの部分をよりどころとする人々、つまり保守的な白人のキリスト教徒は「アメリカの理想に反する偏狭で排他的なヤカラ」という話になってしまう。

進歩的な立場からの文化的規制、いわゆる「ポリコレ」や「キャンセル・カルチャー」にしても、タテマエによってホンネを圧殺する動きにほかなりません。

しかも2045年には、人口構成の変化により、白人は文字通り少数派に転落すると言われます。

われわれは祖国によって滅ぼされようとしている!

庶民、わけても貧困層を中心に、白人がそう思っても不思議はありません。

トランプの大物サポーターとして知られた「オルタナ右翼」の論客、リチャード・スペンサーなど、次のように述べました。

「アメリカの理想には非常に複雑な思いがある。白人は自分たちこそアメリカだと思ってきたが、そうではないことに気づかされた。われわれはアメリカに打ち勝たなければならないんだ」(スティーブン・マーシュ『新たなる内戦 近未来からの緊急警告』、アヴィッド・リーダー・プレス社、アメリカ、2022年、202ページ。拙訳)

アメリカの思想的状況については、中野剛志氏らとの共著『新自由主義と脱成長をもうやめる』でも論じましたので、ぜひ、あわせてご覧ください。

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