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「甲子園、2部制でも命が危ない」と医師警告のワケ 無理する球児を襲う「熱疲労の蓄積」の怖さとは

東洋経済オンライン / 2024年8月8日 13時0分

猛暑の中で行われる夏の甲子園。熱中症対策が甘いと筆者は指摘します(写真:danny/PIXTA)

気象庁が7月の平均気温が26.22℃だったと発表した。過去最高だった昨年(25.96℃)を上回り、2年連続で記録を更新した。

【図で見る】8月、9月、10月の気象庁の予報。各地で相次ぐ40℃超え「この暑さ、いつまで続くのか?」

午前と夕方に分ける2部制を導入

8月7日、全国高校野球選手権大会が始まった。

高校球児に対する熱中症対策は喫緊の課題だ。主催者である日本高校野球連盟などは、3日間限定ではあるが、試合を午前と夕方に分けて行う2部制を導入するなど、対応に余念がない。

筆者はこのような議論を聞いていて、医学的に重要な視点が欠けていると感じる。それは“熱曝露による疲労の蓄積”を考慮していないことだ。

このことを考えるうえで示唆に富むケースがある。それは、2007年の夏の甲子園に出場した報徳学園のエース近田怜王投手の経験だ。

近田氏はその後、ソフトバンクホークスに入団し、現在は京都大学野球部の監督を務める。ホークスファンならずともご存じの方も多いだろう。

6月21日、朝日新聞が「熱中症で降板した甲子園 『申告できる人に』京大監督の教訓と指導」という記事で紹介しているので、ご興味がある方はお読みいただきたい。

この年、近田投手の前評判は高く、報徳学園は優勝候補の一角に挙げられていた。ところが青森山田高校に敗れ、1回戦で姿を消した。敗因は近田投手の不調だ。

近田投手は4回頃から足がつりはじめ、7回には両足のけいれんが止まらなくなり、立っていることもできなくなった。結果、青森山田高校打線に打ち込まれ、途中降板となった。最終的に5―0で敗れている。

敗戦から3日後、体調は十分に回復していなかったが、近田投手はトレーニングを再開した。午後のランニングを始めたところ、意識がもうろうとしはじめ、やがて意識を失った。

周囲の人の助けにより、救急車で最寄りの病院に搬送された。医師の診断は重度の熱中症で、そのまま集中治療室に入院となった。

致死率10~50%のヒートショック

この状態は医学的には「ヒートショック」と呼ばれ、致死率は10~50%程度とされている。筆者もこうした患者を何人か担当したことがあるが、全員亡くなった。

並外れた体力があった近田氏は、幸いにも一命を取りとめたが、ヒートショックによる筋肉をはじめとしたさまざまな臓器への障害は、その後の近田氏のキャリアに負の影響を与えたはずだ。

朝日新聞の記事によれば、近田氏の体調不良は青森山田高校との試合から始まったものではないらしい。7月の兵庫県予選が終わったあとに微熱が続き、倦怠感を自覚していたという。

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