コメだけじゃない!食材不足からの「和食危機」 「令和のコメ不足」に陥っている4つの要因
東洋経済オンライン / 2024年8月8日 11時0分
農林水産省が発表した6月末時点での2024年産主食用米の作付け意向調査によれば、16道県で前年実績より作付け面積が増加する。
「とはいえ昔と違い、コメは価格が低迷し、生産者にとって利益が低い商売になってしまっています。近年は飼料用米のほうが需要もあり、補助金なども多かったんです。今は一部見直しされましたが、今需要があるからといって、生産者がすぐ単純に主食用米に転換しよう、とはなりづらいかもしれません」(中村代表理事)
増産の見通しが楽観視できないのは、近年新規参入者が増えた野菜生産と異なり、「生産・流通がかなりシステマチックなコメは、野菜のように付加価値をつけにくい。稲作単一経営であれば、生産規模を大きくしていかないと、利益を取りにくいんです。現実的には広い水田を確保しづらいので、多くの農家は複合経営になっています」と、中村代表理事は補足する。
「足りない」のはコメだけではない
また、近年は具材のバラエティが豊かになったおにぎり以外にも、現代的にアップデートされ、脚光を浴びる和食は多い。しかし、和食に不可欠な他の食材でも、生産者の高齢化や気候の不安定化で不足が問題になっている。
おにぎりでコメの相棒とされる海苔も、不作で価格が上昇している。食品新聞3月27日付の報道によれば、主産地の有明海で2年連続不作だったことが要因で、主だったメーカーが値上げに踏み切る。
同記事は不作の要因を、海水温が高いうえ雨が少なく、プランクトンが海中の栄養塩を食い尽くしたこととしている。栄養塩とは、海中の植物が栄養源にする、窒素を含む硫酸塩やリンを含むリン酸塩などを指す。
中村代表理事はこの点についても、「海苔養殖は海の環境で生産量や質が決まるので、気候変動の要因は大きい。しかしそれだけでなく、海苔の養殖漁師も高齢化が進んでいます。漁業は新規参入がしづらい産業だということも相まって、収穫量が減少する問題に向き合うための、リソース不足も問題です」と話す。
実は、海苔を取り巻く厳しい環境は、もっと前から始まっていた。2015年2月12日付の朝日新聞によると、瀬戸内海で栄養塩が減り過ぎる貧栄養化が、1990年代から問題になっていた。2年後の12月2日付の日経新聞でも、栄養不足で海苔生産量が落ち込んでいる、とある。
どちらの記事も、高度経済成長期の赤潮による富栄養化対策として、排水処理能力を上げ過ぎたことを問題視し、各地の漁協が処理能力を下げたことも伝えていた。栄養塩を増やしても、今は不作なのである。日経は合わせて海水温の上昇も要因の1つとしていた。
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