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能登地震液状化、傾斜した住宅をどう再建するか 基礎の損傷が復旧を左右、地盤改良が難題

東洋経済オンライン / 2024年8月9日 8時0分

能登半島地震で液状化した内灘町の住宅地。側方流動と呼ばれる現象が起きた(撮影:岡田広行)

2024年1月1日に起きた能登半島地震では、液状化による被害が各地で生じた。日本建築学会・基礎構造運営委員会の主査として、石川県内灘町や隣接するかほく市大崎地区で調査に当たった東京工業大学の田村修次教授に、液状化による住宅被害の実態と復旧・復興に必要な方策についてインタビューした。


――能登半島地震の調査でわかった主なことは何でしょうか。

【調査結果を図で見る】地盤の変状が建物傾斜の被害につながっている

私が主査を務める日本建築学会・基礎構造運営委員会は今年3月上旬から4月上旬にかけて、石川県内灘町およびかほく市大崎地区で建物の液状化被害に関する調査を実施した。調査には約100人の専門家が参加した。

これから述べる事実や分析は、6月25日に開催された日本建築学会の「能登半島地震災害調査暫定報告会」で私が報告した内容に基づいている。今後、詳細な分析結果は、日本建築学会大会の災害調査報告会(8月28日)で大阪大学の柏尚稔教授から発表される予定だ。

県道8号線に沿って液状化が発生した内灘町およびかほく市大崎地区で調査した約1600棟のうち、戸建て専用住宅が全体の約7割を占める。

今般、戸建て専用住宅の被害についての考察をした。外観からの推定ではあるが、地盤に変状があった建物の場合、建物の建設年代が古いほど、建物の傾斜が大きいことが判明した(下図参照)。ちなみに建物傾斜が1度(約1000分の18)以上の場合を「建物傾斜大」、同1度未満を「建物傾斜小」と定義した。建物傾斜が1度程度でも、めまいや頭痛、吐き気などの健康障害が生じ、住み続けることは困難だ。

地盤変状の住宅は基礎に多くの被害

次に、基礎の損傷程度と建物傾斜の関係について考察した。その結果、地盤変状がなければ基礎はおおむね無被害だった。一方、地盤変状があった場合、基礎が部分的に損傷、さらに破壊したケースが多く見られた(次ページ図の参照)。

基礎の部分的損傷または破壊があった多くの場合で「建物傾斜大」または「建物傾斜小」となっており、基礎の損傷と建物の傾斜に強い関連性があることが見て取れた(次ページの図参照)。

――住宅の被害を考えるうえでは、基礎がしっかりしているかどうかが重要だということですね。

そこで小規模建物の基礎に関する法規制やガイドラインなどの変遷を見てみたい。

1981年の建築基準法改正により、鉄筋コンクリート造の基礎が推奨された。その後の2000年から2001年にかけて、建築基準法が再改正され、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)が制定された。これにより鉄筋コンクリート造基礎が義務化され、SWS試験による地盤の許容支持力度算定といった簡易な地盤調査が必須となった。また、セメント系固化材などによる地盤改良が行われるようになった。

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