能登地震液状化、傾斜した住宅をどう再建するか 基礎の損傷が復旧を左右、地盤改良が難題
東洋経済オンライン / 2024年8月9日 8時0分
そして2008年には日本建築学会が小規模建築物基礎設計指針を刊行し、具体的な構造計算法を提示した。これにより、中小の工務店でも簡易な計算ができるようになった。
基準強化が被害軽減につながった
つまり、かつては無筋コンクリート基礎だったものが、鉄筋コンクリート基礎が推奨され、その後、義務化された。近年は、地盤調査や地盤改良が一般に行われるようになった。
今回の被害調査では、戸建て住宅の推定年代と必ずしも整合性が取れているわけではないが、地盤改良が行われ、基礎が鉄筋コンクリート造のケースでは、被害が限定的になっている可能性が高いことが見て取れる。反面、非常に古い住宅では基礎が壊れているケースが多く、建物の大きい傾斜につながっている。
ただし、鉄筋コンクリート造基礎にしただけでは、液状化による沈下リスクはなくならない。無筋コンクリート造よりはましだが、地盤改良が行われていない場合、建物全体が傾斜してしまう可能性はある。
――被害防止・住宅再建策をお聞きする前に、今回の能登半島地震による液状化被害の状況についてお尋ねします。内灘町やかほく市大崎地区での液状化の特徴として、「側方流動」が挙げられています。これはどのような現象でしょうか。
東日本大震災では、千葉県浦安市などで液状化が起こった。この時は噴砂などの現象が見られた。それに対し今回の能登半島地震では、内灘町、かほく市大崎地区で、噴砂はもとより、地盤が水平方向に大きく変位する側方流動と呼ばれる現象が生じた。浦安市の場合は液状化のみであったのに対して、内灘町やかほく市大崎地区では東の河北潟があった方向へ地盤がメートルのオーダーで流動した。
過去に河北潟の干拓のために、内灘町やかほく市大崎地区で砂を採取するために砂丘を掘り下げたため、地下水位が浅くなった。浅い地下水位が液状化被害を大きくした。逆に地下水位が深いため、砂丘の上の住宅地では液状化は起きなかった。
念入りな地盤改良が必要
――側方流動はどの程度の規模で起きたのでしょうか。
内灘町北部の室地区では、元の場所から約12メートルも変位した住宅があった。これは側方流動によるものと考えられる。なぜ、この場所だけ変位量が大きかったかは不明である。さらなる調査が必要だ。
東日本大震災の際の浦安市の場合は新しい住宅が多く、基礎がしっかりしていたので建物の損傷が軽微で建物全体が傾くケースが多かった。これに対して今般の内灘町やかほく市大崎地区では古い家が多く、側方流動の影響で基礎が壊れて建物が損傷したケースが多数見られた。また、外見上の被害は少ないものの、液状化の影響で建物内部が歪んだ住宅もあった。
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