「全国630の商店街」巡って撮り続けた"昭和の姿" 休日に各地の商店街を訪ねる会社員の日常
東洋経済オンライン / 2024年8月9日 9時0分
その「取材」の成果を学校の自由勉強帳に書いたところ、担任の先生が職員室で回し読みするほどおもしろがってくれた。それがうれしくて、ますます商店街にハマっていったという。
建築の専門家やクリエイターからも熱視線
そんな商店街への熱い思いが再燃したのは2004年。日暮里駄菓子問屋街(東京都荒川区)が近く閉鎖されると知り、週末に撮影に行ったのがきっかけだった。
以来、山本さんは古い商店街の写真を本格的に撮るようになる。2010年にはブログ「香ばしい町並みブログ」を開設。次第に読者が増え、毎回コメントをくれる「固定客」もついた。
ブログの読者で最も多いのは、山本さんより10~20歳上の世代で、昭和の町並みを懐かしむ人たちだという。
次いで多いのは、古い商店街を好きな人たち。その次に多いのは、内装業に従事する人、建築が専門の大学教員や外国人の研究者、ジオラマ作家やアニメの背景画を手がけるクリエイターなど。
山本さんの写真はノスタルジーを呼び起こすだけでなく、古い商店街を記録した貴重な資料にもなっているのだ。
「『レトロなものはお金を出せば買えるが、古い町並みはもう写真でしか見られない。あなたが撮った何気ない風景をもっと見たいという人は多いと思う』と言われたことがあります。それほど商店街のある風景は当たり前すぎて、撮っている人がほとんどいない。私が商店街の写真を撮り続ける理由は、そこにあります」
商店街巡りの際、山本さんは事前の調査にかなりの時間をかける。
「調査8割、実行2割です。『全国の商店街リスト』のようなものはないので、一から調べる必要があります。ネットがないころは電話帳で調べていました。いまはGoogleマップや商店街好きの方のブログなどから探すことが多いです。自治体ホームページに掲載されていた商店街の空き商店対策の資料を参考にしたこともあります」
商店街巡りでは、特に古い商店街が固まっているエリアを優先して回る。公共交通手段を使うため、電車やバスの時刻表を事前に調べて効率よくたくさん回れるように綿密な計画を立てている。遠方の場合は、Googleマップのストリートビューで確認する。
「行ってみたら更地になっていたことが何度かあったんです。“反則技”かもしれませんが、取り壊されていないかどうかだけは、ちらっと確認します」
目的地の近くにほかに商店街がないかも念入りに調べる。すぐそばに別の古い商店街があった、と後で気づくことがまれにあるのだという。
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