「全国630の商店街」巡って撮り続けた"昭和の姿" 休日に各地の商店街を訪ねる会社員の日常
東洋経済オンライン / 2024年8月9日 9時0分
商店街では、できるだけお店に入って買ったり食べたりするようにしている。忙しそうでなければ、お店の人に話しかけたりもする。散策しているだけでは見えないドラマが垣間見えることもあるからだ。
その好例が、「外苑マーケット」(東京都新宿区)である。
国立競技場に隣接していた都営住宅の1階にあった商店街で、昭和の東京オリンピックの際の開発で誕生したが、令和の東京オリンピックに伴う国立競技場建て替えで住民や店主は立ち退きを余儀なくされた。山本さんは閉店直前の2015年12月に訪れている。
「タバコ屋のおばあちゃんは『前のオリンピックの立ち退きでここに来たのに、またオリンピックで立ち退きなのよ〜』と笑っていましたね。
青果店のご主人は『米屋や魚屋が閉じた後に、住民から頼まれて米や魚も置くようになった。大変だけど、置いてくれって言われるとやらないわけにはいかない。店はお客のためにあるものだから』と淡々と話されていました。
こうした話も埋もれていたかもしれないと思うと、お店の人とお話しできてよかったと思います」
3分の1の商店街はすでになくなった
2023年9月、山本さんは著書『昭和の商店街遺跡、撮り倒した590箇所〜全国厳選108スポットの[ド渋]写真〜』を出版した。掲載した商店街のうち、約3分の1はすでになくなり、もう見ることができないという。
平日は効率よく業務を回しながら、休みの日を使ってまだ見ぬ商店街をたくさん巡るのが山本さんのこれからの目標だ。
「大阪市や神戸市、尼崎市、北九州市などの都市部には、まだ回り切れていない商店街がかなりあります。しかし、あと10年もすれば、どうなることか。写真に残せるかどうかは時間との勝負。できるだけたくさん撮って回りたいと思っています」
【その他の写真を見る】駄菓子がぶら下がる「日暮里駄菓子問屋街」、せんべろで有名な「立石仲見世」、トンネルのような「板橋区のトンネルマーケット」など、全国各地の商店街
横山 瑠美:ライター・ブックライター
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