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消費者庁が激オコ「激安居酒屋チェーン」の実態 名物皮串は50円(55円)から、「新時代」とは?

東洋経済オンライン / 2024年8月9日 10時0分

こうした背景には、特に近年の都市空間において、「新時代」が持っているような「猥雑さ」や「いかがわしさ」が無くなりつつあることが挙げられるだろう。

精神科医の斎藤環は、コロナ禍で起きた人々の衛生意識を「コロナ・ピューリタニズム」と表現した。ここでは「他人に触れてはいけない」ことが大きく前面化し、「清潔であること」が一つの倫理観となったという。猥雑さとは正反対の方向に社会が進んでいるのだ。

これはコロナ終息後でも進んでいることだ。私たちは過度に「きれいなこと」や「正しいこと」に気を取られるようになり、少しでもそこから外れると、すぐに炎上騒ぎが起きてしまう。

一方、斎藤は、こうした「コロナ・ピューリタニズム」のときに提唱された「清潔で正しい」生活について「まことに味気ない」とも書く。みんなはっきりとは言わないけれど、まったくその通りだろう。猥雑でいかがわしいものが何もない、清潔で正しい生活は、味気ない。

その意味で、こうした「いかがわしさ」を提供してくれる空間は、意外にも需要があるのではないか。「新時代」はこうした人々が潜在的に持っている(でも、なかなか表立ってはいえない)ニーズをうまく汲み取っていたといえる。

「いかがわしさ」と「正しさ」のバランスをどう取るか

とはいえ、今回の件に話を戻すならば、景品表示法違反は明確にNGである。それは揺るがない事実だ。

しかし、「新時代」自体、ある種、そうしたグレーゾーンの立ち位置にある店なのだとすれば、ある意味、今回の違反もまた、一つの「新時代」のブランディングになるかもしれない(事実、内税でも外税でもかなりお得に感じるのは変わらない)。

ただし、この戦略は諸刃の刃でもある。やりすぎれば、過去のコロナ禍出店も悪すぎる印象になってしまうし、客足減少につながる。

「適度に猥雑」で「いかがわしさ」のある空間をうまく作ることができれば、現代において大きな強みになるだろう。こうしたバランスの良い空間を作っていってほしい、とニュースを見ながら、私は思うのだ。

谷頭 和希:チェーンストア研究家・ライター

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