女子ボクシング「性別をめぐる論争」の最大の問題 観戦する側にも求められる「リテラシー」とは
東洋経済オンライン / 2024年8月9日 14時30分
例えば、トランスジェンダーとはどのような困難さを抱えた人生なのか、DSDsの場合はどうなのか、その苦しさは、その人が置かれた環境の違いも含めて考えると当事者でなければおそらくわからないでしょう。そうではあっても、人生の苦しみを抱えている人の存在を否定したり、存在をことさら取り上げたりすること自体が人権侵害だと、誰もが理解する必要があります。
根拠ない「推測」に基づく報道の大問題
今回の件では、当初、奇異な出来事という論調で取り上げたり、選手たちがトランスジェンダーなのかDSDsなのかを根拠なく推測して報じているメディアもありました。確認もしないまま高度なプライバシーに属する情報を添えて「あの選手はもしかしたら……」と読者が推測できるように書いたり。しかし、途中からこれは誹謗中傷の類だろう、とか、人権侵害だろうという論調が主流になってきました。
冒頭にも書きましたが、自分の性に関わることを他人に大っぴらに噂されたうえに、競技の場にいるべきではない人間であるかのような疑念を持たれることは、人として、選手として耐えがたい苦痛です。
もしそれが自分や自分の家族だったら……と思えば、人の生き方に関しては、言っていないことを第三者が公然と語ってはいけない場合があると、容易に気づくのではないでしょうか。
だからこそ国際オリンピック委員会(IOC)は今回、「選手は女性として生まれ、出場資格はパスポートの記載に基づく」という表現を使っています。だからといって、額面通りパスポートだけで判断しているわけではありません。
バッハ会長も「女性として生まれ、女性として育てられ、女性のパスポートを持ち、長年女性として競技してきたボクサーが2人いる」との声明を出しました。女性であり、今回のルール上、適正に女子競技に参加する資格があると判断された人たちだということに尽きます
こうした表現は国際的な人権基準に則ったものであり、パスポート上の文字面だけで判断していることと同義ではありません。そして、ルールの適正性は、その競技の関係者や専門家が議論して、可能な限り公平なものへとブラッシュアップしていくものだと思います。
13競技がトランス選手向けの参加ポリシー公開
これはトランスジェンダー選手の参加ポリシーについてですが、筆者の研究室が6月に調べた時点では、今回のパリ大会の実施競技になっている33競技団体のうち、13競技団体がホームページ上に公開をしています。
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