1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

紫式部が見た「中宮彰子」の異様すぎる"出産光景" 出産は「物の怪」との戦い、涙を流す女房の姿も

東洋経済オンライン / 2024年8月10日 9時0分

さらに襖障子と御帳台の間にある狭い場所には、40人余りの者が座っていました。人々は、身動きすることもできず、のぼせたようになっていたようです。中宮の出産を控えた緊張感や、興奮がみなぎる様子がひしひしと伝わってきます。

屋敷は混雑を極め、一度、自宅に下がった女房などは、せっかく来たにもかかわらず、屋敷に入れてもらえない有様でした。屋敷に入れない女房たちの中には、中宮への想いが募り、泣き出す者もいたようです。

9月11日も、依然として、人々の興奮状態は続いていました。中宮は、御几帳(ついたて)が幾重にも重ねられた中で、過ごされていました。

そこへ、僧正などが参上し、加持祈祷を行います。それを見守る女房たちは「ここまで祈祷をしているのだから。難産はあったとしても、まさかのことは……」とお互い言い合いつつも、泣き出す有様です。

大人数の女房に取り囲まれていては、中宮も圧迫感があるだろうと、道長の配慮により、女房らは、御帳台の南側や東廂(廊下のような細長いスペース)に分散させられます。産所の二間には、ある程度身分が高い女房だけが控えることになりました。

道長は、あれやこれやと大声で指示を出したので、僧侶の祈祷の声もかき消されるほどだったとのこと。道長も相当気が立っていたのでしょう。

多くの人々が、あっちへ来たり、こっちへ来たり、ソワソワとして落ち着きがありません。殿方(左の宰相の中将・経房)が几帳の上から覗き込んだので、紫式部たち女房らの泣き腫らした顔も見られてしまいました。

そのときには恥ずかしいと思う精神状態にはなく、後から(あのときのぺしゃんこになった装束を着た私は、どんなにみっともないものだったか……)と、恥ずかしさというよりは、笑いがこみ上げていたようです。

多くの者が、中宮の出産を今か今かと待ち受け、いよいよそのときがやって来ました(出産前、中宮は頭頂部の御髪を削ぎ、授戒されたといいます)。

紫式部が記録した出産の異様な光景

出産の直前の異様な空気を紫式部は日記に記しています。

「ご出産なさるというときに、中宮様から形代に移された物の怪が悔しがってあげる叫び声の何とおぞましいこと。

阿闍梨(高僧)らは、物の怪に引きずり倒されて大変気の毒なことになっていた。そのため、念覚阿闍梨を呼び、加勢させた。阿闍梨の法力が弱いのではない。中宮様に憑いていた物の怪の力が強すぎるのだ。祈祷師たちは、一晩中、大声を張り上げていたため、声を枯らしている」と。 

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください