日本の少子化問題が解決できない「本当の理由」 少子化の要因は晩婚化や晩産化などではない
東洋経済オンライン / 2024年8月10日 10時0分
各年齢別の初婚数、第一子出生数、第二子以降出生数の2000年から2022年までの減少数を比較したグラフが以下です。
29歳までの初婚数の減少が約33万組、第一子出生減が、約24万人、第二子以降の出生減が約15万人。30代以上の減少が抑えられても、また、40代以上はすべてプラスだったとしても、それで29歳までの減少幅をカバーできるレベルではないし、第一子の減少(つまりは、初婚の減少)こそが、現在の出生数減少の根源であることがわかります。
逆にいえば、出生数の減少を本気で抑えたいのであれば、この20代での初婚数の減少幅を小さくしないとほぼ意味がないということです。
晩婚化や晩産化の問題ではない
また、少子化の要因として晩婚化や晩産化をあげる人がいますが、これらのデータからわかることは、起きているのは晩婚化や晩産化ではないことです。2015年までは晩婚化や晩産化があったかもしれませんが、それ以降2022年にかけては、晩婚化や晩産化という後ろ倒しではなく、20代で初婚や出生をしなかった層は、そのまま30代でもしないままという状況に変わっています。40歳以降の初婚や出生数は増えていますが、全体から見れば微々たるものです。
特に、20代女性が結婚に踏み切るには、夫となる相手の経済力を気にしないわけにはいきません。かつて夫年上婚が多かった時代では、その経済力は年の差でカバーできていたかもしれませんが、昨今夫年上婚は激減しています。
婚姻数の多かった1970年には8割を占めた夫年上婚は、2020年には5割台に低下。絶対数でも62万組から16万組へ減少、年間当たり46万組も減少しています。この46万組減少はほぼ全体の婚姻数の減少数と同等であり、つまり、婚姻数の減少はほぼ夫年上婚の減少によるものです。
年齢が同じくらいの中から相手を探すといっても、20代のうちにある程度の経済力のある層は限られていて、婚活をしても結局「希望する相手がいない」まま20代を通り過ぎ、気付いたときには「無理に年収の低い人と結婚しなくても独身のままでいいかな」というモードに入ってしまう場合も多いでしょう。
「マッチングアプリ」で婚活支援は的外れ
そんな中、東京都が独自の「マッチングアプリ」の開発を進めるという話や、政府も少子化対策の一環として、「若者のライフデザインや出会いの支援」、いわゆる婚活支援に乗り出す方針であることなどが報道されていましたが、これもまた的外れと言わざるを得ません。
少子化の問題は婚姻数の減少であるという事実認識と若い人の婚姻を支援する必要があるという課題の抽出までは間違っていませんが、大事なのは「婚活支援」ではなく「若者が若者のうちに結婚して家族を持てると思える環境支援」のほうです。
そして、その環境のもっとも比重の大きい部分は経済環境です。経済環境が芳しくないがゆえに、若者は現在や将来に対する漠然とした不安を抱えるわけで、その不安があるためになるべくリスクを冒さないようにしようという行動萎縮の心理が働きます。
実際、従業員1000人以上規模の大企業や公務員の未婚率は高くありません。将来の不安もなく、経済的にゆとりのある若者は結婚も出産もできている。そうした現状を正確にとらえ、表面的な「支援をやってる感」の対策ではなく、実質可処分所得をあげて、中間層の若者の心の余裕を整えることこそ必要だと思います。
荒川 和久:独身研究家、コラムニスト
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