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ダイヤ通りは6割、ドイツ鉄道「遅延」の深刻事情 「時間に正確」は印象だけ?ラテン系諸国は改善

東洋経済オンライン / 2024年8月10日 7時30分

スイス国内を走るドイツの高速列車ICE。遅れにより国境手前で運行が打ち切られることも多い(撮影:橋爪智之)

スイスの新聞「20Minuten」は5月、交通機関調査プラットフォームOpentransportdataの調査・分析結果として、2023年にドイツ方面から国境のバーゼルを経由してスイスへ乗り入れてくる列車のうち、定刻通り運行されていた列車はわずか36%で、48%は3分以上遅れていたと報じた。

【写真】ドイツの発車案内掲示板で遅延の表示を見ない日はない

同プラットフォームは2018年から列車の定時運行に関するデータを収集しているが、調査を開始した2018年は、まだ半数以上の列車が定時で運行されており、ドイツ鉄道の遅延状況は年々悪化の一途をたどっている。

スイス鉄道が「見捨てた」ドイツ

ドイツの旅行情報サイトReisereporter.deが行った別の調査では、ドイツ鉄道の2022年における定時運行率は過去最低の65.6%にとどまり、スイスの92.5%と比較して30%近く下回った。過去10年の数値はいずれも70%以上を記録しており、60%台に落ち込んだのは初めてのことだ。

しかもこの数値は、スイスでは「3分以上」の遅れという、より厳しい基準で計算されたもので、ドイツでは「6分未満」は遅れとしてカウントしていない。同じ基準で比較をすれば、その差はさらに広がることになるだろう。

スイス鉄道(SBB)はドイツからの乗り入れ列車について、スイス国内のダイヤへの影響を避けるため、国内の運行系統からは切り離すと明言している。ドイツからの列車が遅れた場合、国境駅のバーゼルSBBでその列車は運行を打ち切り、スイス国内向けには臨時列車を仕立て、バーゼルから先の国内区間の定時運行を確保している。

また、あまりに遅延が生じることから、近年では直通運転を行っていた一部の列車をバーゼル止まりに変更している。言葉は悪いが、ドイツからの旅客に関しては見捨てるという形だ。

ドイツからスイスへ向かう乗客は旅行客のほか、ドイツに居住してスイスで働いている人も多く、両国間を結ぶ需要は高い。だが、列車の遅延とそれに伴う運転打ち切りは乗客にとって大きなマイナスとなる。

直通運転の取りやめは意地悪なようにも見えるが、スイス国内は前述の通り、90%以上の高い定時運行率を誇っており、他国の列車遅延によって自国内のダイヤが混乱することは好ましいことではない。自国民の利益を守るため、他国を切って捨てるという選択は決して間違ったことではない。

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