ダイヤ通りは6割、ドイツ鉄道「遅延」の深刻事情 「時間に正確」は印象だけ?ラテン系諸国は改善
東洋経済オンライン / 2024年8月10日 7時30分
実は優秀なフランス・イタリア
「(他の外国と比較して)ドイツは時間に正確、勤勉、実直で真面目」
多くの日本人は、ドイツについてそういう印象を持っているのではないだろうか。それは大筋で間違ってはおらず、実際ドイツ人の多くは勤勉で、時間に対してもルーズではない。ただ、国を代表する公共交通機関だけは、自国内からもいい評判は聞こえてこない。「時間内に到着することは諦めている」「遅延に対して耐え忍ぶしかない」という悲観的な声ばかりだ。
ドイツという国に対するもともとの期待値が高い分、遅延が多発する現在のドイツ鉄道に対して批判の声や、失望・落胆する声が大きくなることはやむを得ない。
では、「最初から期待されていない国」の状況はどうか。国民性の違いから、時間にルーズという印象ばかり持たれがちなラテン系の国々、例えばフランスやイタリアなどだが、これは意外にも悪くない。
フランスは、過去数年で少し数値を落としたものの、定時運行率はおおむね80%以上を記録しており、どの列車もまずまずの定時運行が行われている。筆者が以前乗車した高速列車TGVは、終点のパリ・リヨン駅に30秒と違わず到着し、驚かされたことがある。
イタリアの鉄道は、「珍しくきちんと到着したと思ったら前日の列車だった」という笑い話まであるほど遅延ばかりという印象だが、とくに高速列車を含む長距離列車に関しては著しく改善され、2022年の定時運行率は78%、2023年上期には80.2%に達したことがイタリア鉄道FSから発表された。
10分以内の遅延は定時運行に含むという少々緩い基準となってはいるが、頻繁に利用する筆者の感覚では、少なくともここ数年に利用した際、5分以上遅れた経験はあまりない。ダイヤに余裕を持たせているのか、途中で10分以上あった遅れが、終点にはほぼ定刻で到着したこともあったし、定刻より5分以上早着したことも1度や2度ではなかった。
スイス鉄道も、「近年のイタリアの定時性は目覚ましく改善している」と、過去には遅延を理由に直通運転を取り消したこともある国を称賛している。イタリアは過去数年で、鉄道インフラの近代化と線路容量拡大に数十億ユーロ規模の投資を行っており、それが数字となって表れた格好だ。
老朽化と地理的要因が生む遅れ
ドイツ鉄道の遅延については、既に何年も前から問題となっており、利用者が苦情の声を上げ、専門家もその問題について指摘している。
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