中高年リスキリングを待ち受ける「3つのリスク」 定年後、ホワイトカラーの仕事に就けるのか?
東洋経済オンライン / 2024年8月12日 10時0分
ただし、そのような分野への労働移動には、オフィスワーカーとして働くのとはまた違ったハードルがありますので、それらをここで整理しておきます。
まず、気力の問題です。加齢を経ても気力がみなぎっているシニアの方を除き、一般的には働くことに対する気力が低下していく傾向にあります。
続いて、体力の問題です。健康寿命を前提に労働寿命を延ばしていくためには、当然のことながら体力が大きなカギを握ります。特に、肉体労働を前提とした分野の仕事に移っていく場合は、とにかく体力面での早期からの事前準備が必要となります。
どちらも、現在の自分ではなく、例えば気力と体力が3割減少した未来の自分を思い描き、やりたいと思える仕事かどうか、適性を丁寧に考える必要があります。
例えば、コミュニケーションが得意なほうなのに、人と話す機会の少ない、単純作業を中心とした仕事をせざるを得ないといった場合は、モチベーションを維持することなどが極端に大変になっていきます。
また、都市部の大企業で働いていたホワイトカラー分野の方々の場合、周囲からの視線や評価を気にするがゆえに、現実を受け入れることが難しく、やる気が著しく低下してしまうことも考えられます。
加えて、給与の問題もあります。
エッセンシャルワーク分野の仕事は、人間が社会生活を営んでいくうえで不可欠な仕事であるにもかかわらず、現時点では著しく時間あたりの賃金が低いことが問題となっています。人材不足やインフレの影響もあり、数年前より賃金上昇が見られる分野もありますが、依然として低水準であることには変わりがありません。
定年後の生活資金に余裕がある方が、社会への継続参加を目的とした就労を志す場合は、給与低下についてはそこまで問題にならない可能性もあります。
しかし、定年後の生活資金を維持するために働かなくてはいけない場合、著しい給与低下が見込まれる分野で働き続けるには、生活コストを下げる、仕事を掛け持ちする、といった対策を講じる必要が出てきます。
デスクを以外の場でITを活用する
特に、3つ目の低賃金については、個人の意思とは関係なく、社会全体として考えていかなくてはならない課題ですが、私が今注目しているのが「デスクレステクノロジー」と呼ばれる分野への投資です。
ここ数年、新型コロナウイルス感染症による影響もあり、リモートワークができる職種へのデジタル分野の投資は大幅に進みました。
その一方で、机に向かって仕事をしていない現場で働く職業(デスクレスワーカー)への投資は、相対的に遅れているといえます。このデスクレスワーカー向けのデジタル技術は「デスクレステクノロジー」とも呼ばれていて、例えば、倉庫での棚卸しをスマホ片手に行えるようにする技術などがこれにあたります。
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