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ほぼ黒塗り!半導体ラピダスへ「巨額支援」は正当か 経産省は前のめり、浮上した政府保証付き融資

東洋経済オンライン / 2024年8月13日 8時0分

その結果、経産省から開示されたのは、「ステージゲート審査」関連の資料である。ステージゲート審査とはNEDOで行われるもので、外部有識者からなる委員会が開発テーマについて、今までの成果や今後の事業計画を評価する。ここで一定以上の評価を得られれば、ステージゲートは無事通過し、次年度の支援を受けられる。

結論を言えば、開示された資料は一般的な制度の説明などの部分以外、すべて黒塗りになっていた。事業計画や予算状況、それに対して誰がどのように評価し、巨額支援が決まったのかをうかがい知ることはできない。

またNEDOから開示された検査書類も同様に、事業計画や資金使途については墨消し状態だ。ラピダスに支出された金額がどう使われたのか、外部から検証することはできなくなっている。

経産省やNEDOが資料の一部を非開示とした主な理由はいずれも、「競争上の地位を害するおそれがあるため」。確かに最先端の研究開発の情報をやみくもに開示することは競争を阻害することにつながるかもしれない。

とはいえ1兆円もの税金が投入され、融資への政府保証すら検討され始めた一大プロジェクトで、外部から監視の目が届かなくなっているのも事実だ。前出のラピダスの取引先関係者は明かす。「半導体工場を建設するに当たっては、一般的には資材調達などで複数社から見積もりをもらうもの。だが千歳工場はそうしたステップを踏まずに進んでいるようにみえる。正当性を問われたら合理的な説明がつかないのではないか」。

後工程でのハードルは高い

現実のビジネス面では着々と布石を打っている。2023年11月にはカナダのテンストレント、2024年5月にはアメリカのエスペラントという、AI(人工知能)半導体に特化したスタートアップとの提携を発表した。まだ十分とはいえないが、顧客開拓は進んでいる。

戦略の柱の1つであった後工程分野でも、4月に535億円の支援が決定、ドイツの研究機関のフラウンホーファーとの提携も公表した。AI向けをはじめ、最先端品では2ナノの回路を描く前工程は当然ながら、後工程においても先端技術の開発は欠かせない。

前工程と同様、後工程が成功するハードルは高い。東京工業大学で後工程技術を研究する栗田洋一郎特任教授はラピダスについて、「開発しようとしているのは学会で『これ以上の高性能化はできない』と結論づけられたスペック以上のもの」と実現性を疑問視。他方で、「日本には後工程の先端材料や装置に強いメーカーが集まっており十分可能性はある」(東京理科大学の若林秀樹教授)との声もあり、見方は分かれる。

顧客確保や技術開発で進捗があるのは、前工程、後工程ともに間違いないだろう。だが、ラピダスの事業の行方を最も左右するのは、今後も続くであろう政府による巨額支援だ。その正当性の検証がなされないまま、ラピダスは量産へ向けて突き進んでいくことになる。

石阪 友貴:東洋経済 記者

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