「認知症とお金」早期治療・ケアで必要な金額は? 300万円の新薬の「メリット」は?専門家に聞く
東洋経済オンライン / 2024年8月13日 9時0分
レカネマブは、認知症の原因とされるタンパクを取り除く働きがある。早期アルツハイマー病の人に2週間に1回の点滴注射を続けることで、18カ月の臨床試験の結果、認知症の進行を27%遅くすることがわかっている。
症状が進むのを先延ばしできるわけで、症状がある一定レベルに低下するまでの期間が、プラセボ(偽薬)を使った人よりも7.5カ月程度長いと推定されている。
レカネマブの投与量は体重1キロあたりで設定され、体重が50キロの人が1年間続けた場合の薬代は298万円。健康保険が使えるので、患者が払う金額はその1~3割になる。
さらに「高額療養費制度」という仕組みがあり、年齢や収入に応じて設定される自己負担限度額を超えたぶんは後で払い戻される。
69歳以下で年収が約370万~約770万円の場合、1カ月間で外来受診にかかる上限は、<8万0100円+(かかった医療費-26万7000円)×1%>。わかりやすく言うと、月に10万円医療費を使ったら約2万円ほど戻ってくる。
とはいえ、年単位で考えるとけっこうな負担になりそうだが、五十嵐さんの研究によると、早期の段階でレカネマブを投与すると、認知症の進行抑制効果と健康状態の改善によって、介護者や社会全体の経済負担を軽減できる。
対症療法と標準的な介護を受けた場合と比べて、医療費だけなら10万円ほど、インフォーマルケアを含むと200万円ほど抑えられるという。
「認知症の進行を遅らせることができれば、本人も、介助者も、就労などで社会参加が可能になったり、自分の趣味を続けたりして、人生を充実させることにもつながります」(五十嵐さん)
何より時間的なものだけでなく、これから先の人生を考える「気持ちのゆとり」ができるともいえるだろう。
医療費の負担を補う存在として、民間の医療保険やがん保険が思い浮かぶかもしれない。入院1日あたりいくら、「●●(病名)と診断されたときにいくら支払われる」といった保険商品だ。
認知症のインフォーマルケアコストを補うニーズがあるからか、レカネマブのような高額な薬の登場を見越したのか、近年、複数の保険会社が「認知症保険」を発売し始めた。
ざっくりといえば、ある認知症保険では月額2000円ほど(50歳男性の場合)の保険料で認知症と診断されれば一時金(100万円)が支払われる。
前出の藤田さんは、「実際に経験していますが、介護が必要になる前、診断されたときから経済的にダメージを受けます。そこをカバーして、暮らしの負担を減らせるような保険があったらいいなと思います」と話す。
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