ふるさと納税「ポイント禁止令」は悪手でしかない 「もぐらたたき」総務省"指導"はどう影響する
東洋経済オンライン / 2024年8月13日 12時0分
ポータルサイトの登場で一気に成長したふるさと納税
ついに「ふるさと納税」が1兆円を突破した。8月2日に総務省が発表した令和5年度の「ふるさと納税」受け入れ額は、約1兆1175億円にのぼった。2008年にこの制度ができてから初のことだ。
日本には寄付行為がなかなか根付かないとの俗説を裏切る勢いだが、寄付という「善意」だけが理由でないことは多くの人が納得するところだろう。ふるさと納税の大きな原動力となってきたのが、自治体からの返礼品であることは明白だ。
そもそもふるさと納税の目的は、都市部から地方への税の循環にある。故郷を離れ、都市部で就職した地方出身者に、生まれ育った自治体への寄付を呼びかけたのが始まりだ。
とはいえ、最初は反応が薄かった。「節税になりますよ」と言われても、確定申告が必要ですと聞けば面倒くさいだけ。最初は一部の節税マニアしか興味を持たなかった。
それがここまで成長したのは、ふるさと納税ポータルサイトの登場が大きかったと言えるだろう。2012年にトラストバンクが「ふるさとチョイス」をスタート。自治体や返礼品を一覧でき、寄付額に応じた検索もできるようになった。
さらに2015年には「ワンストップ特例制度」が始まり、確定申告が不要に。控除限度額の引き上げもあり、一気に寄付額が跳ね上がる。続々と新たなポータルサイトが参入し、「魅力的なお礼の品が受け取れる」とアピール。一見するとネットショッピングサイトと見分けがつかないほどになった。同時に始まったのが返礼品競争だ。
もぐらたたきのような総務省の指導がついに…
多くの寄付が集まれば、それだけ自治体の税収は潤う。そのために自治体は返礼品の豪華さを競うようになっていく。目立たなくては寄付が集まらないと、一時はアマゾンギフト券やiPadまでが返礼品として登場した。
その後のいきさつはご存じの通り。自治体が派手に打って出ると、総務省がそれはけしからんと厳しく取り締まる通知を出すイタチごっこが繰り返される。金券など換金性の高い品はNG、返礼割合は3割以下でないとダメ、昨年の10月からは返礼品として認める地場産品の基準を変更した。
熟成肉と精米は同じ都道府県で生産されたものを原材料にする場合のみ地場産品として扱うよう厳格化したのだ。肉とコメは人気の返礼品だけに、産地と非産地の格差も大きい。それがダメになれば、また抜け穴を考えるのが人情というもの。総務省はもぐらたたきのように問題児を潰してきたようにも見える。
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