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大工激減の一方で、「大工講座」が大人気の事情 副業・兼業大工が増えることの意味とは

東洋経済オンライン / 2024年8月13日 10時30分

日本では一人前に価値があるとされ、特に職人はつらい修行に耐えてなんぼといった意識が根強くあるが、この講座が目指すのは作ることを楽しみながら、副業や兼業で家を直せる「半人前の大工」だ。

主催した西村組/合同会社廃屋は、地域の空き家を次々にDIYで改修し、神戸市に複数の廃墟を改装した「バイソン」という村まで作ってしまった集団で、空き家を自分の手で再生したいという人たちには知られた存在。特に関西ではメディアにも頻出し、中心になっている西村周治さんには空き家をもらってほしいと所有者からの相談が相次ぐ。

講座は初回のテーマが「使える空き家の見分け方」だったこともあって広く関心を集め、募集開始半日ほどで15人の定員をはるかにオーバーする申込があった。以降10回の講座があり、回によっては40人を超す人が集まった。

参加者は、大工作業は初めてという人たちで男女はほぼ半々。回によっては女性が多かったこともある。年齢的には学生から高齢者まで幅広い人が集まったが、中心は30代だったそうだ。

日系アメリカ人で2016~2019年に語学教師として京都に滞在していたスダ・ジャロッド・ゼンジローさんは京都から消えつつある町家の保存に関心を持った。再来日した2021年に神戸市の主催する「神戸農村スタートアッププログラム」に参加。市職員から西村さんを紹介され、講座を受け、現在は西村さんから譲り受けた明治時代の古民家を改修している。

「講座で実際の古民家の改修の様子が見られたのがよかった。今、手を入れているのは30年空き家だった家で大掃除に2カ月かかり、住めるようになるまでにはまだ1~2年かかるかもしれませんが、自分で身体を動かした成果が形になっていくのは楽しく、うれしい。やりがいがあります」(スダさん)と大工作業の魅力を語る。

関西学院大学4年生の菅野佑志さんは、大学の空き家についての講義で西村さんを知り、以前からモノ作りに関心があったことから大工の世界に触れてみたいと参加。そこでモノを作る楽しさ、特にみんなと力を合わせて作業する喜び、達成感に目覚めた。

「身の回りでよく空き家を見かけますが、空き家問題は行政がやるもの、自分には手を出せないと無力感があったのですが、実際に大工作業をしてみて自分にもできる!と発見。勇気づけられました」

空き家から価値、資産を生み出せたら

菅野さんも西村さんから廃屋を譲り受け、友人たちと一緒に数年かけて改修を行い、建物を使えるようにするだけでなく、それによって地域を変えていきたいと考えている。一般に空き家はネガティブな存在として捉えられているが、育成講座を経て手を動かせるようになった彼らにとっては自分たちで変えられる余白に見えているのである。

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