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"かぞかぞ"河合優実「令和版あの女優」になる確信 時代への疲労感を抱えた圧倒的な存在感

東洋経済オンライン / 2024年8月13日 11時0分

父親が突然亡くなり、母親は突然、車いすユーザーの障害者となり、さらに弟はダウン症(実際にダウン症のある俳優・吉田葵の演技が素晴らしい)という、いよいよ切迫した状況の家族に囲まれながらも、明るく、かつ、どこか天然に生きていく主人公・七実が、河合優実に与えられた役どころ。

そりゃあ純子も杏もよかった。『ナミビアの砂漠』の主人公もたぶん素晴らしいはずだ。しかし私にとっては今のところ、ここでの七実が、河合優実にとってのいちばんの当たり役だ。

「1986年の不良少女」や「薬物依存症」ではなく、関西にある学校のクラスに、1人くらいは必ずいそうな女子が七実である。しかし河合優実は、そんな役どころの本質をグイッとつかみ取り、自分=河合優実自身にググッと引き寄せている。

だから、関西出身者である私が抱く感想は、「あぁ、こういう女の子おりそうやわぁ――でも、これは河合優実にしか演じられへんわ」というアンビバレントなものとなる。同様の感想を抱く関西人は多いのではないか(なお東京出身にもかかわらず、河合の関西弁は異常に上手い。朝ドラ『おちょやん』における、同じく東京出身の杉咲花レベル)。

余談ながら、そんな河合優実とコンビを組む、通称「マルチ」役の福地桃子が出色。七実とマルチのやり取りは、何時間でも見ていられる自信がある。

褒め言葉としての「何を演じても河合優実になる」

さて、これまでこの連載では、森七菜、安藤サクラ、川栄李奈、戸田恵梨香など、その時期その時期の旬の女優(最近風当たりの強い言葉だが、あえて使う)を取り上げて、その魅力を分析してきたが、彼女たちと河合優実には、根本的な違いがある。それは「遠心力」と「求心力」の差異だ。

令和における優秀な女優は、一般的に実に器用である。演技力に加えて、覚悟や度胸もあり、千変万化の七変化、どんな役に対しても、驚くほど器用にこなしていく。

ただ河合優実は、「どんな役でも器用にこなす」ではなく、「どんな役でも自分のほうにググッと引き寄せる」感じがするのだ。

つまり「何を演じても河合優実になる」――というと、少しばかり批判めいた言いっぷりに聞こえるかもしれないが、まったく逆で、「久々に出てきたよ、怒涛の存在感が」という、極上の褒め言葉を埋め込んでいる。

このクラスタに加わるのは、最近でいえば、河合優実以外では、門脇麦ぐらいではないだろうか。

このクラスタの特性を、もう少し具体的にいえば、食品や飲料のCMにキャピキャピッと出てきて、CMのラストカットで「♪キャンペーン実施中!」と叫ぶことが、ぜんぜん似合わなさそうということ。無論、こちらも極上の褒め言葉のつもり。

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