「5割できればOK」92歳シスターの"納得の境地" 「あきらめる」ことで人生が好転することもある
東洋経済オンライン / 2024年8月14日 15時0分
母親がいったん腹を決めると、すぐにその日に小さな変化が起こりました。夕食の席で、息子がこうつぶやいたのです。
「このカレー、おいしい」
長年まったく耳にしたことがなかった、息子のプラスの言葉でした。それから、息子は徐々に心を開き始め、ついに母親と共に近所を散歩したり、会話を楽しめるようになりました。それから、母親は再びセミナーに出席してくれました。
私はその会で、物理学者・寺田寅彦の「どうでもええ」という言葉を紹介しました。「これは決して投げやりな言葉ではありません。どうあってもいい。こうあってもいいという意味の言葉です。与えられた現状を受け入れることこそ、問題解決につながるのです」
会のあと、母親は私のもとに現れ、こう話してくれました。
「私は今まで息子に『みなと同じように学校に行かなきゃダメ、働かなければダメ』と言い聞かせてきました。しかし、学校に行かなくても、健康でいてくれるなら、それだけでいいではないか。そう思うようになってから、うまくいくようになりました。今では『どうでもええ』という言葉に心から共感することができます」
翌日、なんとその息子が私の講和の会に1人で来てくれました。
「僕は中学も高校も行っていないので、フリースクールのようなところに通い、そこを出たら職業訓練を受けようと思っています」と話してくれました。母親のプラスの波動は、確実に息子に伝わっていたのです。「聖なるあきらめ」が、事態を大きく好転させてくれたのでしょう。
高望みをしたり、先のことを思いわずらって不安になったりするのではなく、今の恵みに感謝しながら生きていくと腹を決めること。それが「聖なるあきらめ」なのです。
不安は無意味。やることをやって、天に任せるだけ
人間は生きている限り、繰り返し「不安」を抱えてしまう生き物です。ここでは、不安の乗り越え方についてお話しします。
昔から、多くの偉人が「不安」というものについて考えてきました。デンマークの思想家・キルケゴールは『不安の概念』という本を書きました。「精神分析」で知られるオーストリアの精神科医・フロイトも、不安について多くの考察を残しています。それほど不安は人間と切り離せないものなのです。
たとえば、大事な取引先をひょんなことから怒らせてしまい「契約が解消されはしまいか」と心配で、一睡もできなかった……などという経験はありませんか。
それはとても苦しい状態でしょう。しかしあなたが解決策を尽くしたのであれば、そのあとはいくら不安になっても「仕方がない」ことなのです。
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