ネット証券5社の牙城を崩すPayPay証券の破壊力 破竹の勢いで口座数伸びるが収益力で課題残す
東洋経済オンライン / 2024年8月14日 8時30分
これまで顔ぶれが固定されてきた「ネット証券主要5社」に、新たな勢力が割って入ろうとしている。「初心者マーケットNo.1」を唱え、急速に口座数を伸ばしているPayPay証券だ。
ネット証券5社の中では、SBI証券と楽天証券の「2強」が抜きんでている。PayPay証券の番所健児社長は「2強に次ぐ第3極としてのポジションが確立されつつある」と、業界内で存在感を高める自社の成長に自信を深める。
NISA口座数で4位に急浮上
すでに実績が出ているのが、今年から新制度に移行したNISAだ。PayPay証券の6月末のNISA口座数は30万を超え、松井証券とauカブコム証券を抜いて4位に浮上した。
しかもNISA口座の申し込みを開始したのは、わずか9カ月前の2023年10月。「他の陣営が長年にわたって(NISAを)手がける中、わずかな期間でここまで支持をいただき(足元でも)増加の勢いは変わっていない」(番所社長)。
1月にスタートした新NISAをめぐっては、すでにNISA口座を持っている既存顧客を銀行や証券会社が奪い合う攻防戦に発展した。
この半年間で最大となる108万口座を獲得したSBI証券では、金融機関の乗り換えが可能となった2023年10月から12月末の間にも約36万口座を獲得しているが、そのうち63.4%は金融機関の変更によるもの。変更の約6割はネット証券他社からの乗り換えだった。逆にauカブコム証券では他社への流出が増加し、新NISAという追い風の中でも口座数を減らす結果になっている。
一方、PayPay証券では、10月から獲得したNISA口座の95%以上が金融機関の変更を伴わないNISA初心者。つまり投資経験が浅いか、もしくは投資未経験者だ。顧客の年齢分布も30代までが約半数を占めており、他社と比べて顧客層の若さが際立つ。
若年層を中心に急ピッチで口座数を増やすことができている原動力は、スマホ決済サービス「PayPay」とのシームレスな連携だ。日常的に使われるPayPayのアプリ内で有価証券の買い付けや売却を行うことができ、買い付けにはPayPayのチャージ残高(PayPayマネー)やPayPayポイントも利用できる。
PayPayのユーザー登録者は約6500万人を数え、加盟店は1000万カ所以上。巨大な顧客基盤と経済圏を持ち、生活に根付いたPayPayアプリ内で、しかも簡単な操作で有価証券の売買を行える「ハードルの低さ」が、顧客を獲得するうえでの武器になっている。
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