生命の存在を明らかにする火星サンプルの可能性 世界が注目する火星サンプルリターン計画の内実
東洋経済オンライン / 2024年8月14日 16時30分
大事なサンプルを置きっぱなしにして大丈夫かと思われるかもしれないが、それを盗むような輩はいなさそうだし(いたら面白いが)、雨も降らず、大気が薄いため風に持ち去られる心配もない。一方のパーサヴィアランスはこの先も走行を続け、科学的に重要なサンプルを収集していく。
さて、2番目のミッションはESAによるサンプルリターン・オービターだ。はやぶさのようにイオンエンジンを搭載し、2029年に予定される火星到着後は周回軌道で待機する。
最後のミッションはサンプル・リトリーバル・ランダーと呼ばれる着陸機だ。その背中にはマーズ・アセント・ビークルと呼ばれるロケットと、サンプル・リカバリー・ヘリコプターと呼ばれる小型ヘリコプターが2機搭載されている(*)。
*火星サンプルリターン計画の構成の変更が議論されており、2機のヘリコプターはキャンセルされる可能性がある。
着陸は2030年かそれ以降なのだが、この時にまだパーサヴィアランスが元気であれば、サンプル・リトリーバル・ランダーが着陸した場所まで自走して持っている29本のサンプルチューブを手渡しする(写真②上段)。
もしパーサヴィアランスが走行不可能になっていたら、サンプル・リカバリー・ヘリコプターがスリー・フォークスまで飛んでいき、あらかじめ置いてきた9本のサンプルを取ってくる。そう、パーサヴィアランスが地表に置き去りにした9本のサンプルは、もしものためのリスクヘッジなのである。
サンプルチューブはロケットの先端のカプセルに収納され、火星軌道へと打ち上げられる。史上初めての火星からのロケット打ち上げだ。この打ち上げ方式がなかなか大胆だ(写真②中段)。
着陸機が背中のロケットをぶん投げ、空中でエンジンに点火するのである。この一見クレイジーな方法を取るのには、もちろん理由がある。着陸機の上でエンジンを点火すると、その噴射で着陸機が動いたり破損したりしてロケットの発射時に思わぬ力が加わってしまう可能性がある。ぶん投げて空中発射すれば、そのようなリスクを防げるのだ。
そして火星軌道を漂うカプセルを待機していたサンプルリターン・オービターがキャッチし、イオンエンジンを稼働させて火星軌道を離脱、そして地球へと向かう。
地球到着3日前、再突入カプセルがオービターから分離される(写真②下段)。そして地球の大気圏へ突入し、アメリカの砂漠に着陸する。現在のところ、地球への帰還は2033年以降に予定されている。
火星に命はあるのか?
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