結局、米国人は何を「決め手」に大統領を選ぶのか 選挙の相棒を「急進左派的」人物に決めた背景
東洋経済オンライン / 2024年8月16日 11時0分
鉄鋼や自動車などの製造業を多く抱えるラストベルトでは、白人労働者層の票が重要になるため、彼らに訴えかけ、響くような政策とポジショニングの再定義をどう展開していくかが勝負を分けるとみられます。
トランプ氏、ハリス氏各陣営の掲げる政策を見ながら分析してみましょう。
経済のトランプ陣営、気候変動対策のハリス陣営
トランプ氏の選挙マーケティングは「Make America Great Again」をスローガンに掲げた米国第一主義であり、環境問題よりは経済優先の政策です。金利引き下げ、減税、ドル安主義、財政拡大、インフレ対策には原油価格低下策と、経済面に強い政策を並べています。
トランプ氏の原油価格低下策は、主要な支持母体である石油産業への優遇策を行うことでアメリカの炭素系企業をよみがえらせる狙いがあります。現在環境問題対策でアメリカの炭素系産業が受けている規制を取り払い、アメリカにおける石油、石炭の供給量を増やして、結果的に原油価格を引き下げようというものです。
実際にこの政策で原油価格引き下げが実現するかどうかは不透明ですが、環境問題よりは経済を重視している姿勢を明確に示しています。トランプ氏の打ち出す強い経済政策は、経済問題に苦しんでいるラストベルトの3州白人労働者層にとって非常に魅力的な、訴求力の高い政策になっています。
それに対してハリス氏の選挙マーケティングでは、「強固な中間層を築き上げる」「未来のために戦う」「we are not going back(元には戻らない)」の3つをステートメントとして掲げており、多様性と包括性を重視し、協調と対話のリーダーシップをハリス氏のポジショニングとして打ち出しています。
そして政策としては特に気候変動対策を重視しており、2035年までに新車をゼロエミッションにする方針を打ち出しています。副大統領候補に選ばれたワルツ氏も、ミネソタ州で公益事業会社に対して2040年までに発電量を100%カーボンフリーにすることを義務付けるなどの政策を行った実績があり、大統領候補、副大統領候補共に環境問題に対する危機感が強いと言えるでしょう。
また、中絶問題に対しては「女性の権利」として擁護する姿勢で、トランプ氏より支持を集めている状況にあります。
経済面では減税政策をとるトランプ陣営とは対照的に、富裕層の所得税引き上げ、法人税の引き上げを掲げています。つまりは経済的利益を追求する共和党に対し、社会的利益を追求する民主党という構図になっています。
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